情報の“貸し金庫”技術に強みあり<br />ビジネスモデルで勝負する国際派<br />リプレックス社長 直野典彦リプレックス社長 直野典彦
(撮影:Kazutoshi Sumitomo)

 メールアドレスしか知らない知人や、ツイッターアカウントしか知らないフォロワーに、“紙”の年賀状を送ることができる──。

 昨年10月末、ITベンチャーのリプレックスは、年賀状サービス「ウェブポ」の提供を開始した。ウェブポとは、オンライン上で簡単に年賀ハガキを作成し、さらに、あて名の印刷から投函までのすべての工程を請け負ってくれるワンストップサービスである。しかも、住所はおろか、名前さえ知らない相手にも年賀状を送ることができる。

 通常、一般的な年賀状サービスといえば、ハガキのデザイン作成、印刷までしかやってくれない。というのも、2005年に個人情報保護法が完全施行されたことで、あて名書きに使われる住所情報の取り扱いに制限が設けられたからだ。

 本来、あて名面に記入される「名前」「住所」といった個人情報は、ハガキの差出人が、送り先相手の了解を得ることなく“勝手に”入力するものである。施行後、送り先相手の同意なくして、(年賀状サービスに従事する)事業者が個人情報に直接触れてはいけなくなったため、住所情報が必要な投函サービスの提供は難しかったのだ。

 昨年2月、リプレックス社長の直野典彦は、日本郵政グループ傘下の日本郵便担当者と向き合っていた。「ウェブ上で年賀状を作成、印刷、投函までできるサービスがあります。われわれと組んでいただけませんか」。

 日本郵便側の反応は鈍かった。「じつは、われわれも同じ構想を持っていたのです。しかし、個人情報保護法の制約があり、実現できませんでした」。

 なおも、直野のプレゼンテーションは続いた。「あて名書きに使う住所情報を安全に預かる新技術の開発に成功しました」。この切り返しに、日本郵便担当者は表情を変えて、商談はトントン拍子に進んだ。

日本郵政との提携以降大手事業者からの提携依頼が相次ぐ

 巨艦・日本郵政を引きつけたのは、リプレックス独自の情報管理システム「セキュテクト」である。セキュテクトは、ユーザー側とシステム側で、データを二重に暗号化する仕組みになっており、さらに、暗号化したデータを復号化する(元の情報へ戻す)ために電子鍵を2本用意しており、2本揃わないと復号化できない。

 銀行の貸し金庫が、銀行と契約者双方の“鍵”が揃わないと開けることができないのと同じ要領で、セキュテクトはいわば、情報の“貸し金庫”ともいうべきシステムなのだ。仮に、個人情報用のサーバからデータが漏れることがあったとしても、解読不能な暗号の羅列情報が出てくるだけで、個人情報の機密性を守ることができる。

 この独自システムを利用すれば、メールアドレスしか知らない知人や、ツイッターやSNSでしか付き合いのない人にも、年賀状を送ることができる。