中国 2016年7月26日

日本人配偶者よりも金持ちが優遇される
中国人のビザ事情

2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、その後上海に約8年在住。情報誌の編集長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋さん。今年から中国人妻と子どもとともに日本に居を移し、中国と日本を行き来する生活に。妻の在留資格取得のために、結婚にいたった経緯や通帳のコピーまで提出しなければならない現実に、大橋さんが感じたこととは?

 観光立国を目指す日本は、外国人観光客をさらに増やそうと、観光ビザの取得要件を徐々に緩和している。ひとつのビザで来日できる回数や滞在期間はさまざまだが、中国人に発給する観光ビザの場合、それは収入や資産によるところが大きい。

 妻の友人は、夫の年収が50万元(約800万円)を超えているため、5年のマルチビザを取得することができた。しかも1回の滞在期間は、最長90日間である。

 一方、我々が上海に住んでいた時、妻を伴って一時帰国する際には「同伴ビザ」という配偶者のためのビザを取得することになる。これは初めての申請の場合、シングルしか発給されず、許される滞在期間はわずか15日間に過ぎない。しかも、滞在期間中の行動予定表まで書かされる。

 カネを持っている観光客を歓迎する一方で、そうでない外国人は、たとえ邦人の配偶者であろうと厳しく管理されるのだ。

国際結婚夫婦にはプライバシーもない!?

 日本に定住しようと思うと、そのハードルはさらに上がる。

 外国人が日本に住むためには、在留資格の取得が必要だ。これがないと長期滞在のビザが取得できないし、住民登録もできない。

 在留資格には、留学や就業など、目的によってさまざまな種類がある。入国管理局や出張所で申請をするのだが、それには膨大な資料が必要となる。

「日本人の配偶者等」で申請する場合は、ふたりの出会った日時や状況、結婚に至る経緯までを詳細に記述し、ふたりが写っている過去の写真まで提出しなければならない。

 海外在住者が申請するうえで厄介なのは、収入を証明する書類だ。会社に所属していれば収入証明書を出してもらえるが、自営業者やフリーランスは、納税証明書がその書類となる。

 しかし、私は昨年まで非居住者だったため、申請をした昨年時点では確定申告をしていない。どうすればいいのか問い合わせると、とにかく収入を証明できればいいので、通帳のコピーでもいいという。あまり気分のいいものではないが、そこまでしなければならないのだ。

 書類を整えるのはかなり負担になるので、代行を請け負う行政書士事務所も多い。そういう業者に依頼すれば、もっとスムーズに取れたのかもしれないが、私の場合、一筋縄では行かなかった。

 苦労して申請書類を提出してから1カ月後、実家に届いた封筒には、書類の不備を知らせる紙切れが入っていた。そこには「結婚してから現在に至るまでの生活状況を説明してください」と記されていた。

 ホームページに記載されているのは必要最低限の書類だけで、必ずしもそれで十分ではないということだ。いかにも役所らしい。

 補足資料を提出してようやく在留資格認定証が送られてきたが、今度はそれを在外公館に持って行き、長期ビザを発行してもらわなけれなばならない。つまり我々の場合、妻の出身地である上海の領事館でビザを取得しなければならないのだ。

 在留資格を管轄しているのは法務省で、ビザは外務省。管轄が違うのは仕方のないことだとしても、情報の共有がまったくなされていないことに苛立ちを覚える。ビザの申請の際、またしてもふたりの出会った日時や状況、結婚に至る経緯を書かされるのだ。

 我々は上海で結婚しているので、上海の領事館に婚姻届を提出したのだが、実はその際にも書かされている。いったい、これまでに何度同じことを書かされたことだろう。

 こうして発給された長期ビザを持って入国することで、ようやく在留カードを手にすることができるのだ。


橘玲の書籍&メルマガのご紹介
世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。
経済、社会から国際問題、自己啓発まで、様々な視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。
「世の中の仕組みと人生のデザイン」 詳しくは
こちら!
橘 玲の『世の中の仕組みと人生のデザイン』 『橘玲の中国私論』好評発売中!

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。