川崎重工業は今後10年で売上高と営業利益率を共に1.5倍の水準まで引き上げる。この目標を実現するには“縦割り”の企業風土を打破して、部門横断のシナジーを生むことが欠かせない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)

 川崎重工業は、前中期経営計画の初年度に当たる2014年3月期から、3期連続で増収増益を達成。16年3月期の営業利益は、中計の目標を6.6%上回る959億円だった。

 好業績の背景に、アベノミクスによる円安の追い風があったことは間違いない。

 だが、全社の事業をROIC(投下資本利益率。資本効率を測る)で評価し、事業の選択と集中を大胆に行う「ROIC経営」を推進した効果も表れている。

 実際、税前ROICは13年3月期の6.1%から16年3月期の9.4%へと上昇。ブラジルの汚職問題の余波で、出資先の現地造船会社から資金回収ができなくなり、損失221億円を計上したことが響いたが、こうした一時的要因を除けば、ROICは実質的に二桁まで改善しているという。

 投資にもメリハリをつけた。16年3月期には、単体での収益力アップが見込めなかった建設機械事業を行う子会社(売上高264億円)を日立建機に譲渡。一方、競争力がある「航空輸送システム」に設備投資を集中した。17年3月期から3カ年の新中計では、前中計から35.8%増の1260億円を投じ、米ボーイングの次世代大型旅客機「777X」向けに新工場を建設することなどを決めた。

 もっとも、グローバルな競合メーカーの背中は遠い。川崎重工の売上高は1兆5410億円、営業利益率は6.2%(16年3月期)であるのに対して、米ゼネラル.エレクトリック(GE)の産業部門の売上高は11兆2500億円、営業利益率は16.9%(15年12月期)と足元にも及ばない。

 金花芳則・川崎重工社長は、「海外展開へかじを切ることで、知名度を高めたい。そうすればおのずと売上高も高められる」と、グローバル市場で存在感を高めることの重要性を強調する。

 26年3月期には営業利益率9%以上を目指し(図(1))、世界と伍して戦える会社への脱皮を図る。

 そのために、是が非でも実現しなければならないのが、成長期待分野の増販だ。新中計ではロボットやエネルギーなど5つの成長分野の売上高を10年で2倍以上にする見通しを示した(図(2))。