さらに、自分自身のことは「自分は被害者だ」「自分はいい社員だ」と正当化しようとします。これが自分の箱に入った状態です。この状態になると、自分を正当化するために外とのバトルが始まるのです。そして「積極性が欠如したり」「問題を引き起こしたり」します。

 会社を非難したり、上司を攻撃したりしているとき、その原因は相手ではなく自分にあるのです。箱のなかにいるか外にいるかの違いは、行動よりも深いところにあります。行動だけでは箱の外に出ることはできません。

 大事なことは、他者のために自分に何ができるかを常に考えることです。ただし、考えたからといって、それをすべて実行する必要はありません。思うように人の手助けができない場合もあるのですから。自分にできる範囲で精一杯のことをすればいいのです。

1対1の人間関係に生かすと効果的

 このスキルは1対1の人間関係に生かすこともできます。とりわけ夫婦関係にはてき面に効果が出ます。夫婦は家事の分担などで利害が対立しやすいうえ遠慮もしないので、お互いに罵り合うほどに関係が悪化する傾向があります。
夫婦関係が、その他の関係へ大きく影響を及ぼすこともあります。子どもとの関係、職場の仲間との関係などです。

 幸い、1対1の関係は劇的に変化します。特に夫婦は毎日同じ屋根の下で暮らしているわけですから、効果はすぐに出てくるでしょう。

 初対面の人においても効果は絶大です。たまたまカフェで隣に座った人や、電車で同じ車両に乗り合わせた人に対しても、自己欺瞞を捨てて箱の外にいることを心がけていけば、好意的な感情が持てるようになり、対人ストレスから解放されます。

参考文献/『自分の小さな「箱」から脱出する方法』アービンジャー・インスティチュート著 金森重樹監修 冨永星訳(大和書房)