さらには現下の就職難で、ゴールデンウィーク後も就職活動を続行し、結局のところ1年がかりの活動になる学生も少なくありません。そのために、「就職活動に追われて、多くの学生が出席できず、ゼミが成り立たない」というような事態が大学では起きるようになっています。

「勉強そっちのけで、長期間にわたって就職活動に追われる」というのは、学生の本分からすれば、かなりおかしなことです。その結果、「ゆとり世代はレベルが低くて使えない」などと評されるのですから、大学生は気の毒です。

 誰もが、「少し行きすぎでは?」と感じていたいまどきの就職活動に対して、問題提起をした商社業界は評価に値すると思います。

4年生からのスタートなら
就職に対する意識も熟している

「採用活動が4年生の夏以降になれば、学生はじっくり勉強できるようになるし、3年生になって留学する学生も増えるでしょう」と、ある就職情報会社の幹部は歓迎しています。「大手のペースに合わせて、しかし学生が採りきれず、実質半年以上も採用活動を続けなければならない中小企業にとっても、短期決戦の採用は望ましいはずです」

 なぜ、これほど採用活動が早期化したかといえば、「優秀な学生の採用は早いもの勝ち」という固定観念が、ある種の業界に根強くあったからではないでしょうか。採用活動の早期化は、必然的に長期化につながります。4月時点で優秀な学生を確保しきることができるのは、産業界全体からすれば、ごく一握りにすぎないからです。

 商社が問題提起したのは、人気業界ならではの自信のあらわれ、という見方もあります。

 しかし、私は必ずしも、そうは考えていません。商社志望というのに「海外勤務はしたくありません」などという学生が少なくない時代です。日本貿易会の問題提起は、若手人材育成そのものを憂慮したうえでのことだと、思います。