空中分解しつつある軍事同盟、
それを喜ぶ「いくつかの国」

自国第一主義、排他主義の蔓延の中で、EUでは求心力よりも遠心力が働いているのである。EUの結束力は弱まると見るべきだ。EUの軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)にも必然的に影響が及ぶだろう。NATOはイギリスのEU離脱決定後の7月8日に会合を開いたが、予想どおり具体的な結論は得られず、結束を固めるという抽象的な合意で散会した。

NATOを支える最大の力、アメリカもNATOに対して強い不満を表明している。トランプ氏は4月27日の初の外交政策発表でNATOに言及し、28の加盟国のうち、GDPの2%を軍事費に充てるというNATO合意を実行しているのは、わずか4ヵ国ではないかと論難した。

大半の加盟国が義務を果たさないような軍事同盟は時代遅れであるとトランプ氏は語る。ヨーロッパ全体の団結力が、軍事力も含めて、弱体化するプロセスが始まったのではないか。

これを歓迎しているのがロシアのプーチン大統領である。同大統領が中東におけるアメリカの空白を巧みに利用して主舞台に躍り出た経緯については前回触れた。

同じ構図がアジアでも見られる。中国は日本などの西側諸国が是とする国際法を守らない。西側諸国が重要視する平和的話し合いに応じない。西側諸国が否定する力による現状変更を敢えて行う。

蛮行と不法行為を続ける中国にどう対応するかが、いまや世界と日本にとっての最重要の課題である。

参院選での与党勝利、
その背後にある「人々の心理」とは?

私たちはいま、急いで日本を中国の脅威に対応できる国に変えていかなければならない。脅威が押し寄せてきたとき、現状では国土、国民を守ることは難しい。このまま基本的な構図を変えなければ、日本の文明を守ることも、やがて難しくなる。

中国の脅威への対処こそ、最も喫緊の課題である。7月10日の参議院議員選挙で与党自民党が勝った理由もそこにあると私は考える。多くの人々が中国の脅威を感じている結果、日本の将来を任すべき政党を選んだのが今回の選挙だったのではないか。それはそのまま、民共連携が勢力を伸ばせなかった理由ではないのか。

この国をやがて社会主義に導こうと考える共産党の思想信条にいま、本当に賛同できるのか。共産党は、日本国を守る責務を引き受けている自衛隊を憲法違反と決めつけ、最終的に解散することを決めている。中国の脅威が増大する前で、本当にこのような政党に議席を与え、日本を任せられるかと言えば、大いに疑問を抱かざるを得ない。その共産党と、価値観を著しく異にする民進党が連携したことへの拒否が、参議院選挙の結果に表れたのであろう。

自民党をはじめとする改憲勢力が参議院で3分の2を勝ち取ったことで、戦後初めて衆参両院で改憲勢力が3分の2を超えた。この国民の声を活かすことが自民党の責任である。

日本国憲法を改正し、日本国を日本国として存続させるための体制をつくる時である。速やかに憲法論議を開始し、憲法改正を発議するのがよい。その際の焦点は、どう考えても、憲法前文と9条2項ではないか。

9条1項は、日本は侵略戦争はしないとするものだ。2項には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記されている。

第1項は日本が守るべき価値としてそのまま残し、第2項を改正して、自衛のための戦いに必要な軍事力の保持をきちんと認め、自衛隊を国軍として位置づけることが重要である。無論、緊急事態条項も必要である。その他にも急がれる改正点があるのは当然である。

折しも、7月14日、各紙が1面トップで、天皇陛下が「生前退位」のご意向を示しておられると伝えた。82歳になられる陛下は、ご自身の健康上の理由からご公務の削減措置がとられていることなどを心苦しく思われて、ご意向を示されたと報じられた。現行憲法では崩御前のご退位はできないためのお考えだという報道である。宮内庁はこの情報を否定したが、皇室典範の改正も含めて私たちは皇室の在り方についても考えるべきなのだ。

こうした重要項目を中心に、憲法論議を速やかに開始し、発議し、国民の意思を問うてほしい。