統合進歩党(統進党)は6人の国会議員から成る小さな政党だった。朝鮮半島有事に乗じて韓国で蜂起し韓国政府を打倒する具体策を定めていた。有事の際、いかにして武器を略奪し韓国政府を打倒するかも謀議していた。事実上、北朝鮮の対南工作のための政党だと判断され、2014(平成26)年12月、韓国の憲法裁判所によって解党された。李石基氏はその党の議員で、現在服役中である。

デモ隊の先頭には指名手配中の民主労組総連盟の韓サンギュン委員長がいた。警官が逮捕しようとすると、周囲の組合員が阻止して逃走させた。韓氏はセウォル号事件1周年のときの暴力デモを主導し、その1週間後に行われたメーデーデモでまたもや暴力行為を煽って、指名手配された人物だ。韓国を混乱に陥れようとする被疑者を公然とかばい逃走させるのは法治国家では許されない。違法行為が堂々とまかり通るソウルの現状は無政府状態に近い。

このような状況について第一野党の新政治民主連合代表の文在寅氏は、朴大統領と政府を激しく非難した。氏は違法で暴力的なデモを企てた首謀者や、それに従った労組を責めるのではなく、デモ取り締まりに警官を出動させたことを非難したが、これは本末転倒ではないか。

文氏は朴大統領の教科書国定化の動きも激しく非難する。韓国では日本よりもっと偏った左翼的教科書で反韓国、親北朝鮮の教育がなされている。このことを懸念した朴大統領が教科書一新が必要だと判断し、国定教科書を導入すると決定したのだが、文氏もデモ隊もこの件に絶対反対のスローガンを掲げたわけだ。

文氏は前回(2012年)の大統領選挙で朴氏と激しく競り合い、選挙前の世論調査によると、勝利するのは文氏だと見られていた。しかし、事実上北朝鮮の代理人である氏の本質を見て取った高齢者層が危機感を抱き、最後の段階で高齢者層の投票率を80%台、90%台にまで押し上げるほどの号令をかけて、文氏阻止のために朴氏に投票した経緯がある。

朝鮮戦争を記憶している高齢者層は北朝鮮の脅威を実感しており、その代理人とも言うべき文氏の当選を恐れたのだ。氏はおそらく次の大統領選挙に再度立候補するであろうが、今度は勝つ可能性がある。まさに韓国の危機なのである。

朴大統領はこうした国内事情を抱える中で、統進党の解党に見られるように、左翼勢力とそれなりに戦ってきたが、今回のデモの激しさを見れば、左翼勢力は全く衰えていない。

隣国の危機を見るにつけ、日本を取り巻く情勢の尋常ならざる危機を痛感する。それなのに、この大ニュースを日本のメディアはほとんど報じていない。危機はテロリストによるパリ襲撃だけではない。日本の足元にも及んでいることを知っておきたい。

(『週刊ダイヤモンド』2015年11月28日号の記事に加筆)