「脳構造」が変われば
「ストレスの捉え方」も変わる

ブリージング・スペースを終えた私は、ヨーダの非科学的な言葉遣いに違和感を覚えながらも、不思議な爽快感を得ていた。

「マインドフルネスは脳をつくり変える以上、ストレスの捉え方そのものも変える」

ヨーダは静かに言う。「理性によってストレスを抑え込むのではなく、理性と感情がうまく調和する脳状態をつくっていくわけじゃ。

もちろん、脳の構造や機能に変化をもたらす細かなメカニズムは、まだ完全にわかっとるとは言えんがな。神経細胞を成長させたり新たに生み出したりしておるのか、はたまた自律神経と免疫の機能を改善して、神経細胞の維持・再生を促したり、死滅を防いだりしとるのか。今後、神経細胞の生存・発生・機能のカギを握る神経栄養因子(BDNF)の測定などが進めば、わかってくることがあるじゃろうな。

あるグループが2010年に報告しているところによると、マインドフルネス・ストレス低減法により、右側の扁桃体で灰白質の密度が減っておった。つまり、ストレス反応を助長する扁桃体の働きが弱まったというわけじゃな。実際、ストレスの低下と同部位の密度減少は比例していたそうじゃ[*1]」

*1 Hölzel, Britta K., et al. “Stress reduction correlates with structural changes in the amygdala.” Social Cognitive and Affective Neuroscience 5.1 (2010): 11-17.

またもやヨーダの眼光が鋭くなっている。声も一段と力強く、いつもの飄々とした口調ではなくなっていた。

「先生、ダイアナの話で思い出したことがもう1つあります。マインドフルネスはどちらかというと心の疲れを癒す方法ですよね。ですが、ダイアナを見ていると、彼女は実際に身体も疲れているという印象を受けるんです。両者はどういう関係にあるんでしょうか?」