ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
佐高 信の「一人一話」

毒のある笑いの発見者 永六輔

佐高 信 [評論家]
【第51回】 2016年8月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 ユニークなパントマイマーだったマルセ太郎も、いま私が一番シャープなお笑い芸人だと思う松元ヒロも、永六輔が“発見”して世に出した人である。しかし、共にその名を知っている人はそう多くはない。松元ヒロなど、永だけでなく立川談志も大推奨しているのに、テレビで見ることはほとんどない。

「絶対テレビには出せない」種類の笑い

 評判を聞きつけてヒロのライブを見に来た何人かのディレクターが、終演後、「いやあ、ヒロさん。おもしろかった。しかし、絶対テレビには出せない」と異口同音に感想を述べるとか。

 マルセ太郎や松元ヒロの笑いが忌避されるのは権力への毒を含んでいるからである。永は自ら足を運んで、そうした笑いを発見してきた。

 松元ヒロと私の共著『安倍政権を笑い倒す』(角川書店)で、ヒロがマルセ太郎との出会いを語る。

 マルセは、猿のマネをして、猿はなぜああいうポーズをとるのかといったことを理詰めで笑いにしていた。しかし、強面の風貌もあって、なかなか売れない。そんなマルセのライブをヒロはよく見に行っていたが、マルセは1回だけしか来てくれなかった。

 「また来て下さいよ」とヒロが言ったら、マルセは「いや、1回見ればいい」と答える。「どうしてですか?」と食い下がると「僕は、思想のないお笑いは見たくない」と言われた。ヒロは、「自分の思想を押しつけるだけがお笑いではないでしょう」と反発したが、「思想のないお笑い」という言葉はヒロの頭から消えなくなった。もちろん、そう言ったマルセも悩んでいたのである。その著『芸人魂』(講談社)によれば、だんだんとステージの仕事が減ってきて、スナックのマスターが本業のようになっていた。

 小さなライブスペースで月に1回やる独演会の客も次第に減っていき、客が1人だけということもあった。ゼロになったら、これもやめようと考えていて、ネタにも困り、ある時、窮余の策で映画の話をすることにした。

翌々日に速達で届いた葉書

 観たばかりの『瀬戸内少年野球団』と以前観た『泥の河』について、アクションをまじえて話したのである。その日の客は10人くらいだったが、中に高い声で笑う人がいた。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

「佐高 信の「一人一話」」

⇒バックナンバー一覧