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米大統領選は嫌われ者同士の「史上最低の戦い」

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第170回】 2016年7月30日
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 アメリカの有力なシンクタンク『CSIS(戦略国際問題研究所)』のジョン・ハムレ所長の言によると、今回のアメリカ大統領選は“かつてないほど異常であり、史上最低の戦い”になるのだそうだ。

 “小さな政府”を志向する共和党は、色もの扱いされ、泡沫候補と言われたドナルド・トランプ氏があれよあれよという間にライバルをなぎ倒し、大統領候補に指名されるに至った。ジョージ・ブッシュ元大統領の実弟ジェブ・ブッシュ氏やキューバ移民の息子マルコ・ルビオ上院議員、なんやかんや言っても最終的に大統領候補に選ばれるのはオバマを追い詰めたこの人だろうと言われていた“ティーパーティー”の英雄テッド・クルーズ上院議員らを破っての指名だから、トランプ氏の選挙戦略はお見事だったと言うしかないのだろう。

 対して、オバマ・ケアに見られるように、政府支出を大きくしても弱者のための社会保障を充実させる“大きな政府”の民主党は、大本命と言われながら三月の“スーパーチューズデー”でも指名を勝ち取れず、ぎりぎりになってようやくヒラリー・クリントン氏が大統領候補に指名された。大統領選は、彼女にとってはこれが二度目の挑戦だ。もう後がないと言われている戦いでもある。

 この二人の大統領選を、ハムレ所長は“異常にして史上最低の戦い”とこき下ろした。

 理由は簡単だ。共和党内には、いまだにトランプ指名を認めようとしない共和党員がいて、民主党内にも、いまだヒラリーにノーを突きつける民主党員がいるからだ。トランプは一部の共和党員から大統領に相応しくないと思われ、ヒラリーもまた一部の民主党員から大統領に相応しくないと思われているのである。

 もっと下世話な言い方をすれば、かつて奴隷を解放した伝統の共和党が指名したのは暴言と失言しかできない政治経験ゼロのトランプで、平等を謳う民主党が指名したのは平等とは名ばかりの嘘つきで高慢ちきで何よりもおカネが大好きなヒラリーだったことが、今回の大統領選を史上最低のものにした……、と言っていいのかもしれない。二人とも嫌われ者なのだ。

 トランプ氏の暴言は、かねてより報道されたとおり。曰く――、全てのイスラム教徒の入国を禁止する。メキシコ人はアメリカに麻薬と犯罪を持ち込む強姦魔だ、不法入国を防ぐためにメキシコ国境には万里の長城を築いてやる、建設費はメキシコ持ちでな。ばか、間抜け。アメリカから守ってもらっている日本は、在日米軍の駐留経費を全額負担すべきだ。応じなければ米軍を撤収させる。何だったら核武装もありだ。世界は私を中心に回っている。私を嫌うものは愛国者ではない。私が大統領になれば必ず“強いアメリカ”を取り戻してみせるエトセトラエトセトラ。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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