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BHPとリオの統合断念でも
ぬぐえぬ国内鉄鋼業界の暗雲

週刊ダイヤモンド編集部
2010年10月27日
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BHPとリオ・ティントの事業統合はなくなったが、国内鉄鋼業界の厳しい状況は変わりそうにない Photo by AFP=時事

 「最悪の事態は避けられた」(大手鉄鋼幹部)

 資源大手の豪英BHPビリトンと英豪リオ・ティントは、豪州西部における鉄鉱石生産事業の統合計画を断念した。

 両社合計の鉄鉱石の市場シェアは、世界の海上貿易ベースで約4割。特に豪州依存が高い日本ではじつに約6割を占めている。計画の破談が発表された同日、日本鉄鋼連盟の林田英治会長が「計画が撤回されたことを歓迎する」とコメントしたのも、むべなるかなである。

 統合計画の実現には、関係各国の競争当局による承認が必要だった。だが、各国の対応は厳しかった。リオによれば、「合弁事業計画を完全に禁止することを示唆した当局もあった」という。

 BHPとリオにとっては壮大な計画がつぶされた格好だ。

 ところが、鉄鋼業界からは「事業統合の必要性が薄れていたことも断念の背景にある」と指摘する声もある。

 リオは2007年、カナダのアルミ大手アルキャンを買収し、巨額の負債を抱え込んだ。そこで財務体質強化のため、同年、BHPがリオに買収を提案。だが、欧州や日本の当局などが反対し、さらにリーマンショックでリオの財務が悪化したため買収を断念した。その後、昨年6月に、両社の生産部門のみを統合する新計画を打ち出した。

 しかし、資源高騰で業績が急回復。今年6月中間期は過去最高益を上げ、純負債額も大幅に削減した。「もはやBHPとの統合を模索する必要はなくなった」(大手鉄鋼幹部)。

 一方、BHPの関心も、カナダ肥料大手ポタシュへの400億ドルの敵対的TOBにシフトしている。

 統合計画の破談は鉄鋼業界にとって吉報である。とはいえ、資源会社の寡占化という事実になんら変わりはない。

 実際、鉄鋼メーカーは今春、資源会社の底力を鉄鉱石の価格交渉でまざまざと見せつけられた。

 今年度からは、従来の通年価格方式から、四半期ごとの価格改定方式に変更された。これにより、昨年度は1トン当たり60ドルだった鉄鉱石価格(豪州産粉鉱)が、今年4~6月は120ドル、7~9月には147ドルにまで跳ね上がった。「資源会社との話し合いは、交渉ではなく、事実上の通告だった」と大手鉄鋼幹部は憤る。

 資源会社の強気姿勢は続きそうだ。来年の世界鉄鋼需要(鋼材見かけ消費)は、前年比5.3%増の約13億4000万トンと、過去最高を更新する見込みだ。

 その一方、日本市場の成長は見込めそうにない。来年の国内需要は微減の見込みだ。また、自動車、電機メーカーなどの海外移転が進むことで、現地調達が高まることは避けられない。

 国内鉄鋼メーカーは、資源権益の確保、海外シフト、低品質な鉄鉱石活用の技術開発など、難題が山積する。一難は去ったものの、決して安穏としていられる状況にはない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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