「幸せ食堂」繁盛記
【第三十四回】 2016年8月15日 野地秩嘉

日本橋浜町の鶏料理一筋の老舗で、
ボリューム満点の鶏肉三昧を。
宴会も可能な楽しい庶民派食堂

から揚げと竜田揚げのハーフ&ハーフも可

 この店の看板料理は鶏のから揚げと竜田揚げ。から揚げライス、竜田揚げライスとも値段は同じで3かんが830円。4かん、880円。5かん、930円。

 同店では昔からから揚げ、竜田揚げを「1かん、2かん」と数える。そして、から揚げと竜田揚げの違いは玉子を使うか使わないかにある。どちらも鶏肉にしょうゆ、みりんなどで下味をつける。そして、片栗粉をまぶして揚げたものが、から揚げ。片栗粉をまぶす前に溶き玉子にくぐらせたのが竜田揚げ。

 便利なことに同店には「ハーフ・アンド・ハーフ」がある。つまり、から揚げふたつ、竜田揚げふたつを頼んで定食にしたら880円で済む。これがいちばん得だと思う。

 問題があるとしたらボリュームだ。1かんがデカいので、4かんとご飯を食べたら、満腹になって眠くなる。から揚げ1かん、竜田揚げ2かんが中年向け定食と言える。

 きじ重(810円)、そぼろ重(810円)、二色重(810円)、いずれも量は多い。重箱にはご飯茶碗2.5杯分のコメが詰まっている。

 このなかで郷愁を誘うのは二色重だろう。ご飯の上に、鶏そぼろといり卵が載っている。小学生の頃、遠足へ持って行った弁当で、飲食店ではめったに見かけないメニューだ。

 鶏そぼろはひき肉をしょうゆ、みりん、酒、砂糖で調味してから炒りつけたもの。炒り玉子も砂糖などで調味してある。相当、甘い。冷蔵庫がない時代でも保存できるように、たくさん砂糖が入った味だ。だが、その甘さが昔を思い出させる。しかし、ひとりで二色重を平らげるのは容易ではない。

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野地秩嘉 

1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。出版社勤務、美術プロデューサーなど を経て、ノンフィクション作家に。食や美術、海外文化の評論、人物ルポルタージュ など幅広く執筆。近著に、「TOKYOオリンピック物語」「イベリコ豚を買いに」「打 ち合わせの天才」「アジア古寺巡礼」「アジアで働く いまはその時だ」など。


「幸せ食堂」繁盛記

この連載は、味がよく、サービスも悪くなく、値段はリーズナブルで、しかも、できればハイサワーやホッピーを置いている店のグルメガイドだ。ここで紹介される店は、金持ちの社長やグルメ評論家はまずいない。著者は、そういう店を「勤労食堂」「国民酒場」と呼ぶ。そこでは客が微笑しながら食べている。ほほえみながら食べている人と一緒にいることは至福だ。人生の幸せは勤労食堂もしくは国民酒場にある。

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