旅行や別荘暮らしではない、日常を綴る場所

 この連載では、わたしたち家族が3年かけて土地を探し、南房総に「もうひとつの家」を持つことになり、以降、都市と里山を往復しながら暮らしてきた体験にもとづいて「二地域に暮らすこと」の意味を考えていきます。

 旅行や別荘暮らしのように、地続きの日常とは違う位相に鮮やかな非日常を求めるのではなく(別荘暮らしはしたことがないので憶測です!)、わたしたちが求めたのはあくまでも、「日常を綴る場所」を増やすことでした。

 場所を変え、視点を変える往復生活の中で、そのどちらもが自分の日常だということでフィードバックされるものは多く、次の一歩を踏み出す道はそれを前提につくられるため、ひとつの場所で日常を重ねてきた場合とは見える道がずいぶん違うのだろうなと、しみじみ考えることがあります。

 さて、そんな二地域居住の波瀾万丈、喜怒哀楽を共にしてきた家族を、ここで簡単に紹介しておきます。

 長男ニイニは中学1年生。虫取り魚獲りはもちろん、アケビの蔓つるでカゴを編んだり竹の器でタケノコごはんをつくったりと、遊びを生み出し続けた小学生時代を経て、今では房総の自然を丸ごと体感するトライアスリートを目指しています。

 長女のポチンは小学3年生、キラッキラの街が大好きですが、ニイニの腰ぎんちゃくで育ったせいでずいぶんたくましく、沢登りも魚獲りもひととおりこなせて、ミミズの手づかみも厭いといません。目下の悩みは、キラッキラの街が好きなのに排気ガスの匂いが大の苦手ということ。

 そして、この往復生活をはじめた後に生まれたメンバーが次女のマメです。現在5歳。生後ゼロヵ月で南房総デビュー、1ヵ月で海デビューも果たし、週末は土の上に転がって育ちました。植物を育てるのが大好きで、将来ここに根を張ってくれるかも、という期待の星です。

 連れ添って13年になる夫は、毎日深夜まで働く勤め人です。自然が大好きのアウトドア派ではありますが、一方で煩悩の塊。「知ってるか?俺のこども時代は世紀のスーパーカーブームで、大人になったら乗るのが夢だった。

 それがどうだ!今じゃファミリーカーにこどもとネコだ」といろいろ言っています。知らん。「でもな、スーパーカーより田舎暮らしだよな。やっぱりモノじゃない、コトだ。思い出だ。いやでも……スーパーカーもあれば言うコトなしだ」と聞く気も失せるないものねだりです。いざというときは頼りになりますが、なかなかいざというときが来ません。

 加えて、本人たちの意思にかかわらず一緒に往復しているのは、ネコのクロとピョンです。東京では完全な家ネコ。「小さいケージに入れられて、しばらくゴトゴトして着く先では、外に出ても怒られないんだよなあ」と思っていることでしょう。

 そして、著者のわたしはアラフォーならぬジャストフォー、母であり妻であり嫁であり、建築関係のライターであり、3年前から「NPO法人南房総リパブリック」を運営しています。

 生きもの全般が好きで、目の合った生きものはすぐ飼ってみたくなるのが悪いクセ。でもこどもから「ママは世話をするために生まれた人間」と言われるとどうも悔しい。誰かわたしの世話をしてくれ!

 南房総での暮らしの何が嬉しいって、生きものたちとの出会いが圧倒的に多いことです。トホホな害獣に手を焼くこともありますが、「害獣」とはこっちの言い分。彼らにとっては「害人」でしょう。いずれにせよ、人間以外と棲家を分け合う環すみ境かでの暮らしにやられっぱなしです。

 以上、5人と2匹。よろしくお願いします。おろおろと情けない部分も、大雑把で適当すぎる部分もわたしたちの真実ですのでご容赦を。

 さて、それではしばし、東京と南房総の往復生活にお付き合いください。

(第2回に続く)