経営×ソーシャル

あらゆる個人情報が取得できる時代に、生き残れる企業の特徴

予期せぬ破壊的な帰結をもたらす「創発現象」とは

國領氏が語る「創発現象」とは?

 SNSの登場によりネットワークは、企業と消費者の間の縦方向だけでなく、消費者同士が横につながるようになってきています。企業が一括してデータを吸い上げるのではなく、さまざまな人がコミュニケーションし、そこから生まれる情報を企業が受け止めて、マーケティングに活用するという時代になっているのです。

 そこで課題となってくるのが、消費者同士の横のつながりは制御がきかないということです。コミュニケーションのゴールがどこにいくかわからないのです。誰かが予期しなかったことを言い出して、炎上する場合もあれば、強烈にロイヤルティが上がることもあります。これを「帰結の予測不可能性」、ないしは「創発」といいます。

 「創発」についてもう少し説明しましょう。比較的自律性の高いユニットが相互作用し、共振を起こすなどしているうちに、ある一方向へエネルギーのベクトルがそろうことがあります。そうすると、爆発的に何かが起きる。これが創発という現象です。株式市場で、何かの情報が出ることによって株価が暴騰したり暴落したりするのも、創発の一現象です。また、企業の会議で異質なプレーヤー同士が意見交換をしているうちに、まったく新しいアイデアが生まれるのも、創発現象といっていいでしょう。

 創発はコントロールがきかない分、マーケティングに応用するのはとても難しいです。しかし、その分だけおもしろいとも言えます。我々はネットワークに対して何もできないかというと、そうではありません。ある特定の帰結に向かってコミュニケーションを操作することはできませんが、プラットフォームの設計をうまくやることで、コミュニケーションのパターンなどをある程度コントロールすることは可能です。

 例えば、コミュニケーションパターンを共有する、役割構造をつくる、参加のインセンティブを提供する、参加者間で信頼が生まれるメカニズムを取り入れるなど。そうすることで、創発的な価値創造を維持することは可能だと考えています。偶然と必然の間にある「蓋然性」を高め、創発のような現象が、偶然に起こりうる環境をいかに整えられるかが鍵になります。

「情報を見せてもらえる特権」を持つ
信頼できる企業だけが勝者になれる

 企業がインターネット上のプラットフォームを運営し、情報が集まってくると、情報が結合するという現象が生まれます。ときに「情報はさみしがりやである」と言われますが、単独の情報だとまったく意味がない場合でも、2つ、3つと結合すると大きな価値を生み出すことがあるのです。

 例えば食品のトレーサビリティ。食品事故が起こったとき、その商品に使われている原料の生産地情報だけでは、対策ができません。しかし、その原料がサプライチェーンを流れる間に、どこをいつ通ったかという記録をとっておくと、どこで事故が起き、何を回収すればいいかということがわかります。位置情報と時間情報のどちらも記録しておくことが重要なのです。

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