モデルルーム見学は、「住んでからの価値」を買う前に検証できるまたとない機会。マンションの場合は、販売センターに併設されているモデルルームと、実際の建物と住戸を見られる「竣工済み物件」タイプの2つがある。それぞれのチェックポイントを、住宅評論家の櫻井幸雄氏に指南してもらった。

Check Point 1
モデルルームは楽しい場所だが
油断できない場所でもあると心得よ

 「モデルルームでは、『してはいけない(禁止)3原則』があるんですよ。見学前に、しっかり頭に叩き込んでおいてください」

 こう指摘するのは住宅評論家の櫻井幸雄氏。さっそくご教授いただこう。

 1つ目は、LD(リビングダイニング)に置かれた家具や壁の絵に目を奪われてはいけない、ということ。これらのインテリアはモデルルームを「より広く、より魅力的に」見せるためにプロのコーディネーターによってセットされたもの。モデルルーム見学初心者はここに目を奪われがちで、「わあ、すてき」と夢見心地になるという。

 「住戸の構造や、間取りや設備の使い勝手、細部の工夫など、本来モデルルームで見極めるべき本質を見逃せば、それこそ本末転倒です。十分気をつけてください」(櫻井氏、以下同)

 2つ目は、「オプション」に目を奪われてはいけない、ということ。オプションとは、本来は付いていない設備や調度品のこと。オーダーすれば付けてくれるが、その分お金がかかるという代物だ。

 「オプションの設備や調度品には、それを示す印(シールなど)が付けられているのが普通ですが、小さいので見落とすことも。さらに最近は、印を付けないケースもあるので注意が必要です」

 例えば、対面式キッチンの背後にぴたりと収まっている「天然大理石カウンター付き食器棚」。「これは標準装備なの?」と聞くと、「いえ、オプションです」。

 それでもあまりのジャストフィットぶりに、これ以外の選択はない気がしてきて「お幾ら?」と尋ねると、にっこり笑って「200万円です」──。こんなやり取りを通じて、初めてオプションであること(と価格)が分かったりするので、油断は禁物なのだ。

 「天然大理石の玄関床」「洗面鏡下のモザイクタイル」「豊富に設置されたダウンライト」あたりも要チェック。「贅沢だな」「すてきだわ」「かわいい」などと思った箇所については全て、標準装備かオプションか確認したほうがいい。遠慮は無用だ。標準装備なら、それだけ評価が高くなる。

 3つ目は、住戸の「グレード」を見誤ってはいけない、ということ。モデルルームでは、例えば100㎡超の角住戸などグレードの高い住戸を見せるケースがある。 モデルルームが2つあるときは、とりわけ一方を大型の住戸にすることが多い。そこでつい、「私もこんな部屋に住めるのね」と錯覚しがちになるのだが、実際はそうではない。「ここは立派だけれど、私が検討しているのはもっと狭く、窓の数も少ない住戸である」ことを、肝に銘じながら見学しよう。

 ちなみに、モデルルームでは必ず靴を脱ぐので、脱ぎやすい靴を履いていくことも忘れずに。