株式レポート
8月19日 9時16分
バックナンバー 著者・コラム紹介
マネックス証券

"目詰まり"を起こす緩和マネーと今後の見通し - 金融テーマ解説

2月16日のマイナス金利導入から半年が経過した。9月の金融政策の「総括的検証」では「大胆な」政策を取るだろうとする報道がある一方、緩和は限定的との見方もあり、市場は金融関連のニュースに対して極めて敏感な動きを示している。

以下の通り、現在の緩和策は、企業の資金調達の長期安定化などに役立っているものの、一部で資金の"目詰まり"が生じてしまっている。この元凶の一つが、マイナス金利後悪化してしまった人々の"センチメント"であると考えられる。

このため、我々は、総括的検証後には、マイナス金利深掘り"以外"の施策が取られると考えている。そして、そのような施策は、現時点では多く残されてはいない。9月の追加緩和に過度な期待を寄せるのは禁物と考える。

1. 金融緩和メカニズムの問題点はどこにあるのか

日銀の15年5月時点の金融政策「検証」レポートによれば、金融緩和の効果は、実質金利低下 → 需要の拡大 +人々のインフレ期待 → 物価上昇といった経路で波及していくとしている(図表1)。

しかし現実には、④のルート、即ち需要改善の兆しが見えない。個人消費による需要が盛り上がっていないことが主因だ。実質金利は低下傾向にあるものの、個人消費は頭打ちが続いている(図表2、図表3)。また、マネックスの個人投資家サーベイでも、1年前と比べて家計を「引き締めている」と答えた人の割合が、「緩めている」という人の割合を大きく上回っている(図表4)。



この背景として、年金や収入等の将来不安が大きいのは事実であろう。しかしこれらは今に始まったことではない。円高が影響を与えている可能性もあるが、少なくとも近年、為替レートと家計支出の相関は薄い(図表5)。このため、金融緩和、特にマイナス金利が、以下のような意図せざる消費抑制効果を生んでいると思われる。

2. マイナス金利の個人のセンチメントへの影響

1)預金の受取利息の減少
周知の通り、日本の個人金融資産の52.4%、約900兆円は現預金である。米国の13.8%、欧州の34.4%と比べてもかなり大きい(図表6)。このため、預金金利収入の減少は、日本では、欧米に比べてはるかに重要な意味を持つ。

ところが、マイナス金利で、預金利息収入が低下し、更に、将来は手数料がかかるかも、という不安まで醸成されてしまった。例えば、今年満期を迎える06年スタートの10年物定期預金や11年スタートの5年物定期預金は、預け替えれば大幅な金利低下となってしまう(図表7)。

2)住宅ローン返済負担の増加
現在日本の全世帯の54%が住宅ローンなどの負債を負っている(2015年平均、図表8)。しかも、これらの世帯の年収に対する負債の比率は増加傾向にあり(図表9)、マイナス金利の導入後拍車がかかっているとみられる。銀行の第一四半期(4-6月)の住宅ローン実行額は、前年同期比32.3%という記録的な増加率となり、その後も一定の勢いが維持されているとみられるためだ(図表10)。

そもそも日本の個人向けローンで金利が市場金利を反映するのは住宅ローンくらいで、それ以外の消費者ローンは殆どが固定金利である。このため、マイナス金利に対し住宅ローンの需要は特に反応が早い。



住宅ローンは、家具等の購入を伴うため、初年度は消費を押し上げる。しかしその後は、住宅ローンの返済負担が家計にのしかかる。月々の元利金返済額は、手取り年収の3割を超える場合もある。

しかも、マンションを中心に物件価格が上昇している分(図表11)、住宅ローンを新たに借りる人の返済負担は重くなっている。既に住居を購入している層は、低い金利に借り換えることで負担が軽くなっているが、新しくマンションを購入してローンを組む若年層は、物件価格の上昇(全国平均で現在7~8%程度)で、平均で年間0.4%程度は月々の元本の返済負担が重くなっている(20年ローンの単純平均)。結局、金利低下メリットが0.4%以下であれば、効果は物件価格の上昇で相殺されてしまっている。

3)中小企業の業績、借入の抑制
日本では、中小企業に勤務する人が全勤労者の69%を占めることから、中小企業の業績も人々のセンチメントを大きく左右する。ところが、中小企業の業況判断は、今年6月、円高やマイナス金利の影響で、2年9か月ぶりに「悪い」が「良い」を上回ってしまった(図表12)。

しかも、大手行では、中小企業に対する貸出条件はじわじわと厳しくなっている(図表13)。これは、中小企業の貸し倒れリスクに対して、金利競争が厳しくなり過ぎて、貸しにくくなっているためである。

また、資金需要がある中小企業も、今後マイナス金利の深掘りがあるという期待感で、借り入れのタイミングを遅らせている模様である。金利は"底"である、というメッセージが発信されるまでは、貸出が伸び悩む可能性がある。

3. 現状を打破するような政策はあるか

マイナス金利の深掘りは、上記のような副作用を増長させることから、なかなか取り難い施策であると考える。ではどのような施策がありうるか。報道されている手段の中では、資産購入枠の柔軟化(年間増加目標を80兆円⇒ 70~90兆円へ)、政府とのコラボによる長期債の購入、買入資産の範囲の拡大、目標の柔軟化(達成期限を定めない)等の施策がありうるだろう。

因みに、7月の政策決定会合で、銀行への国債貸出枠(いざという時は日銀が市中銀行に国債を貸し出して、銀行が担保に困らないようにする制度)を作ったことで、銀行は国債を売却する余地が拡大した。政府の今後の国債発行額増額の可能性も考えれば、購入目標を若干引き上げても達成可能だろう。

それでも、大々的に報じられた9月の"検証"の結果が、こうした既存の政策の延長線に留まるのであれば、市場の失望を招きかねない。金融政策への過度な期待は難しくなってきている。

■ご留意いただきたい事項
マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を提供することはありません。
本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわすものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。
当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、マネックス証券のウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」(※)をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。
((※)https://info.monex.co.jp/policy/risk/index.html)

■利益相反に関する開示事項
当社は、契約に基づき、オリジナルレポートの提供を継続的に行うことに対する対価を契約先金融機関より包括的に得ておりますが、本レポートに対して個別に対価を得ているものではありません。レポート対象企業の選定は当社が独自の判断に基づき行っているものであり、契約先金融機関を含む第三者からの指定は一切受けておりません。レポート執筆者、並びに当社と本レポートの対象会社との間には、利益相反の関係はありません。

(マネックス証券)


マネックス証券
株式売買手数料(指値) 口座開設
10万円 30万円 50万円
100円 250円 450円
【マネックス証券のメリット】
日本株投資に役立つ「決算&業績予想」、信用取引ではリスク管理に役立つ信用取引自動決済発注サービス「みまもるくん」が便利。米国株は最低手数料5ドル(税抜)からお手軽に投資が可能で、米国ETFを通じて世界中に分散投資できる。投資先の調査、リスク管理、リスク分散など、じっくり腰をすえた大人の投資ができる証券会社と言えるだろう。一方、短期・中期のトレードに役立つツールもそろっている。逆指値ほか多彩な注文方法が利用できる上に、板発注が可能な高機能無料ツール「新マネックストレーダー」が進化中だ。日本株、米国株、先物取引についてロボットの投資判断を日々配信する「マネックスシグナル」も提供しており、スイングトレードに役立つ。
【関連記事】
◆AKB48の4人が株式投資とNISAにチャレンジ!「株」&「投資信託」で資産倍増を目指せ!~第1回 証券会社を選ぼう~
◆マネックス証券おすすめのポイントはココだ!~日本株手数料の低さ、ユニークな投資ツールが充実しているネット証券大手
マネックス証券の口座開設はこちら!

 

株主優待名人の桐谷さんお墨付きのネット証券!最新情報はコチラ!
ネット証券口座人気ランキングはコチラ!
NISA口座を徹底比較!はコチラ
株主優待おすすめ情報はコチラ!
優待名人・桐谷さんの株主優待情報はコチラ!

 

Special topics pr

ZAiオンライン Pick Up
[クレジットカード・オブ・ザ・イヤー2017]2人の専門家が最優秀クレジットカードを決定! 2017年版、クレジットカードのおすすめはコレ! おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードは、 本当は“ゴールド”ではなく“プラチナ”だった!? 日本初のゴールドカードの最高水準の付帯特典とは? 高いスペック&ステータスを徹底解説!アメリカン・エキスプレスおすすめ比較
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
じぶん銀行住宅ローン 「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」付帯サービスはプラチナカード顔負け!最強ゴールドカード 実力を徹底検証  アメリカン・エキスプレス・スカイ・トラベラー・カード 「アメリカン・エキスプレス」が誇る、高いスペック&ステータスを徹底解説!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

新理論株価で儲かる株
株主優待ベスト130
ふるさと納税ベスト86

1月号11月21日発売
定価730円(税込)
◆購入はコチラ!

Amazonで「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!


【株主優待ベスト130&新理論株価で買う株】
桐谷さん&優待ブロガー&ザイ読者が厳選!
 初心者も安心!株主優待ベスト130
失敗しない優待株の投資のワザ
●「優待+配当」利回りベスト30
少額で買える優待株ベスト30
権利確定月別の優待株ベスト 130
新理論株価まだ買える株68
年末までに駆け込め!ふるさと納税86
 3大カニマップ&寄附額管理シート付き! 
iDeCoつみたてNISAもこれが大事!
 騙されるな!投資信託選び10の落とし穴
●高配当&高成長の米国株ベスト12
地方上場の10倍株&佐川急便の投資判断
別冊付録!つみたてNISA完全ガイド

「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

Apple Pay対応のクレジットカードで選ぶ! Apple Payに登録して得する高還元率カードはコレ! 堀江貴文や橘玲など人気の著者のメルマガ配信開始! 新築マンションランキング
ZAiオンラインPickUP