3PL事業への取り組みが本格化するにつれて事業者(運輸や倉庫事業者)には、物流ソリューションに関わるさまざまなノウハウが蓄積されてきた。しかし荷主はアウトソーシングしているために自社内から物流関連のノウハウが消失するという現象が出現したのだ。鈴木教授は「荷主の空洞化」だと言う。

 その結果、事業者がさらなる高度な改革策を提案しても、その内容を荷主が咀嚼(そしゃく)できない事態が出始めた。さらに咀嚼できないがために、一部の荷主の要請がコスト一本に終始してしまう傾向も出てきている。  実際、国交省の各種の追跡調査などによると、3PLの普及とともに荷主と事業者の間に幾つかの課題が浮上してきている。それは「非対称性」とでも表現できるものだ。

 例えば情報開示が限定されること。事業者側からすると、物流ソリューションの向上に必要な各種の業務情報が荷主側から十分に開示されないために、提供できる価値が限定されてしまう。また荷主と事業者の関係性がパートナーではなく単なる委託業者に終始してしまい、そのために正当なコスト要求も通りにくくなっている。

 「物流は、安全、安心、正確に運ぶという事業の基本からなのか、減点主義的な発想がある。こうした点を踏まえてソリューションの供給者と享受者の関係性について新たなモデルづくりが必要ではないか」(鈴木教授)

高度なソリューションへ
LLPやL1マイルでの攻防

 自社物流にこだわるか、3PLなどを積極的に利用していくかは非常に悩ましい問題だ。

 SCM全体になんらかの自社の独自性や強みを見いだしている企業は自社物流にこだわる。アマゾンやセブン―イレブン、ユニクロなどは、その代表例だ。

 その上で鈴木教授は、3PLの利用について「第三者評価を受けてみるべきだ」とアドバイスする。「企業規模にもよるが物流はいくらでも自己流でやれる領域。しかし、コストや運営体制が標準的なものであるかを自己点検しにくいのが物流でもある。その意味で第三者評価による点検は有効だ」と勧める。

 幾つかの課題を抱えつつも物流ソリューションの進化は止まりそうにない。すでにLLP(Lead Logistics Provider)や4PL(米国のコンサルティング会社が提案したビジネスモデル)など、「3PL」のコンサルティングを行うというサービス概念も打ち出されている。ネット通販の増加の勢いは止まらず、顧客と接する「ラストワンマイル」の品質向上策も新たな課題になっている。

 物流の巧拙が企業イメージや事業成果を左右し、企業の競争力に決定付ける。BtoBやBtoCを問わず、この一点だけは揺るぎない課題となっている。