11月3日、米連邦準備制度理事会(FRB)は、6000億ドルの国債追加買い入れという、大規模な追加量的緩和策を発表した。昨年3月の量的緩和第1弾では、世界に金融緩和競争と通貨安戦争が引き起こされた。今回はどんな影響が及ぶのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎、竹田孝洋)

米国発6000億ドル“量的緩和”の衝撃<br />沸騰する新興国、商品相場新興国からは非難の声も高まっているが、米国に限らず、先進国は自国の政治面から強い金融緩和を進めざるをえない。写真はバーナンキ・FRB議長(10月25日のシンポジウム)
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 自己都合の極端な金融緩和政策は、他国に甚大な副作用をもたらしかねない──。

 今回の米国の大規模な量的緩和は、自国内への効果は期待されるほどではなく、他方、新興国には好ましくない大きな影響を与える可能性が高い。「バブルの崩壊に対応した金融政策が新たなバブルを生むという“バブルのリレー”」(河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミスト)を引き起こす懸念である。

 2000年代前半の日本の異例の金融緩和・円安政策は、円キャリートレードを生んだ。“安い円”が米国に大量に流れ込み、米国住宅バブル生成の小さくない一因となった。

 その教訓を早くも忘れてしまったかのような先進国の金融緩和・通貨安競争によって、今、マネーは高成長・高金利の新興国へと一気に向かう。マネーの奔流は、資産バブルやインフレを引き起こす。

 米国の金融政策は、日本や欧州とは比較にならない影響力を持っている。「いまだに米国の金融システムは機能不全であり、ケタ違いの緩和をしなければ景気への刺激効果は見込めない。一方、新興国の金融システムは無傷なため、すみやかにその影響が及び、きわめて大きな金融緩和になってしまう」(吉川雅幸・メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)。

 米国の超低金利政策に伴う「ドルキャリートレード」は09年春頃から目立ち始めていたが、顕著になったのは今年8月末、バーナンキ・米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演で、国債買い入れなどの追加緩和策が“予告”されてからだ。