ソニーはカセットテープのウォークマンの日本国内向け出荷を終了したと発表した。このニュースは、英国でも大きく報じられた。

 BBCテレビは夜のニュース(10月25日)で放送。専門家は「今後はウォークマンの収集価値が高まる」と語っていた。「デイリーテレグラフ」(26日)は、「ウォークマンは世界初の商業個人向けステレオシステムであり、人びとの音楽の聴き方に革命を起こした」「よく言われるが、それはあらゆる時代における最も偉大なガジェット(電子機器)の発明であった」と書いた。

 最も思い入れ深く報じたのは「タイムズ」(26日)だろう。ニュースとして報じる以外に、社説でも取り上げた。さらに2ページの特集も掲載した。「われわれはどれほどウォークマンを愛していたか」「カセット(とウォークマン)によって、西側ポップミュージックはベルリンの壁を越え、ロシア共産主義に入っていった」。

 それらの報道からは、ウォークマンの登場がヨーロッパ文化に強い衝撃を与えたことが伝わってくる。海外の報道で日本人が誇らしい気分になれるのは、久しぶりだ。しかしながら、非常に気になるのだが、それらの報道は、カセットテープのウォークマンの製造中止を、ブランドの消滅と同義として報じている。ウォークマンのデジタル携帯プレーヤーが認知されていないのだ。確かに、英国の量販店ではソニーのデジタル携帯プレーヤーをあまり見かけない。日本では販売台数で米アップルのiPodを一時追い抜くほどの健闘を見せているが、残念ながらこちらでは勝ち目がないようだ。