FRBが決めた6000億ドルの国債購入策が政治問題と化してきた。ユーロ圏、ロシア、ブラジル、中国など世界各国から激しい反発が噴出している。オバマ大統領までが批判の声を鎮めようと懸命に説明を行っている。

 前アラスカ州知事のサラ・ペイリンは、バーナンキはこの政策を即刻停止しろと激しく攻撃している。一部の米メディアは、デフレが心配なときにインフレを心配するペイリンは的はずれだと批判しているが、彼女は意外に本質的なことを言っていた。「われわれは、一時的な偽りの経済成長でインフレを起こしてほしいとは思っていない。真の経済改革を伴った堅実なドルを欲している」。

 多くの市場参加者と同様、FRB幹部も、内心は国債購入による長期金利低下が経済を着実に浮揚させる効果は限定的と考えているだろう。米家計は深刻なバランスシート問題や雇用不安を抱える。金利が制約になって、住宅投資や消費の伸びが抑えられているわけではない。また、銀行は1兆ドルという途方もない超過準備を抱えつつ、「貸し出し・リース」を減少させている。9月も年率7.1%のマイナスだ。そこに新たに超過準備を加えても、銀行の行動は変わらないとFRBも見ているようだ。

 それでもFRBがこの政策を決定したのは、それが心理的に株価を上昇させたり、ドル安効果をもたらしたりすることを期待したからだろう。ピムコのビル・グロスは国債購入策を「ネズミ講のようなもの」と酷評している。