8月の米国の非農業部門雇用者増加数は15万人。6月の27万1000人、7月の27万5000人から増加幅が縮小した。このため、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げは見送られそうだ。ただ、過熱感がある住宅市場などへのけん制のため、今後の利上げに含みを残す声明を出すのではと予測されている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)

8月の米雇用増加幅縮小で米利上げ9月見送りの公算ジャクソンホールで利上げに前向きな発言をしたイエレン・FRB議長だが、9月は見送りか Photo:REUTERS/アフロ

 9月2日に発表された8月の米国の雇用統計の結果を見て、「FRB(米連邦準備制度理事会)は、9月20日、21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げは見送るが、昨年10月のFOMC時のように、次回会合以降の利上げをにおわせる声明を出すのでは」との声が複数の市場関係者から上がり始めた。

 その理由は、米国の雇用や海外経済の状況が昨年10月のFOMC時と似ているためである。

 昨年10月のFOMC後の声明文では、「次回会合でFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標の引き上げが適切かどうかを判断するに当たり」との文言で、次の12月の会合で利上げの是非を判断することを明言した。

 まず、雇用面での昨年10月と現在の類似点を見てみよう。8月の非農業部門雇用者増加数(前月比。以下雇用者増加数)は15万人。6月、7月と20万人台後半の増加が続いた後の10万人台半ばの増加という結果だ。昨年10月のFOMC前も、4月から7月まで20万人台の増加が続いた後、8月、9月は10万人台半ばの増加となり、伸びが鈍化していた。

 次に、海外経済情勢の類似点だが、昨年は、8月の人民元切り下げショックで、世界の株価は大きく下落し、為替市場の変動幅も大きくなった。その後、10月ごろには持ち直しの段階に入っていた。今年も6月末の英国のEU(欧州連合)離脱ショックで、市場が大きく動揺した。その後、今は落ち着きを取り戻しつつある状況だ。