6月末に施行された改正・産業活力再生特別措置法(産活法)では、政府が日本政策投資銀行を経由して経営不振企業に資本を注入できるようになった。第1号案件として、エルピーダメモリが認定された。だが、産活法は、「窮状企業の延命策ではないか」(電機メーカー幹部)と、厳しい視線が向けられている。

 ある経済産業省幹部は、「産活法=窮状企業の“最後の砦”というレッテルを貼られた。本来、国が救済すべき有望企業による活用が遅れつつある」と困り顔だ。

 実際に、産活法に新設された公的支援メニューの目玉は、資本注入だけではない。その意外なメニューは2つある。

 1つ目は、省エネ対策に取り組む企業への税負担の軽減措置だ。省エネにつながる設備投資の全額を、初年度に費用として計上し、課税所得から差し引ける(たとえば、法定耐用年数10年の設備の場合、通常償却と比較して、初年度の減税効果は投資額の30%に上る)。

 “省エネ投資”支援第一号として、経産省は、シャープの液晶パネル生産子会社・シャープディスプレイプロダクト(SDP)を認定した。「法人税の支払いが繰り延べられ、投資負担の重い初期段階でキャッシュフローが改善できるメリットがある」(シャープ幹部)。また、SDPの増資時に必要な登録免許税が半減される措置もあり、「3.5億円程度の減税効果がある」(経産省幹部)という。

 2つ目は、7月27日に発足する官民の投資ファンド「産業革新機構」の創設だ。狙いは、大学、中小ベンチャー企業の持つ先端技術の発掘や、大企業に分散した技術・事業の集約にある。機構に、国が820億円を出資するのに加えて、民間企業・投資家からも出資を募る。政府出資の規模の大きさもさることながら、(機構への)民間金融機関からの借入金に対して8000億円もの政府保証が付くというから、政府の大盤振る舞いぶりは尋常ではない。

 もっとも、前者の“省エネ投資”支援として認定されたのは、7月末現在でわずか2件である。後者の官民ファンドにしても、膨大な国費がつぎ込まれるわけで、支援対象の企業・プロジェクトの選定や、進捗状況の監視には厳格化が求められるなど課題は多い。それでも、産活法は本来、窮状企業の延命策ではなく、有望企業の活性化策に使われるべきだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

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