役員就任と時期を同じくして、パーキンソン病と診断されたTさん(52歳)。今後10年、なんとしても症状を抑えたいと願い、手術を選択した──。

 パーキンソン病は、脳の神経伝達物質の一つであるドパミン不足が原因の病気。運動機能に障害が生じ、力を抜いたときに手足が震えるなどの症状が現れる。また、二つの動作が同時にできなくなるので、もし右手で「お星さまキラキラ」をしながら、左手は膝上でリズムを刻めるなら、パーキンソン病の可能性は低い。

 脳内のドパミンは20歳頃にピークを迎え、健常人でも年齢とともに合成量が低下する。そして、ピーク時の20%を割り込むとパーキンソン症状が現れる。誰でも年をとるとドパミン不足で動作がぎこちなくなるわけだ。ところが、パーキンソン病では50代や60代でこの20%ラインを割ってしまう。原因は依然、不明のままだ。ただ、この数十年で治療法が飛躍的に進歩したため、症状をコントロールしながら、自立した生活をまっとうできるようになってきた。

 治療の中心は薬物で、ドパミンの原材料を補うレボドパや、ドパミンの神経伝達を代行するドパミン作動薬(DA)が使われる。