民間病院の名門である亀田総合病院(千葉県)を2015年9月に懲戒解雇された元副院長の小松秀樹医師が今年9月、同病院などを展開する亀田グループの経営者2人、さらに厚生労働省と千葉県の職員2人を相手取り、二つの民事訴訟を起こした。闇に葬り去られるとみられていた、解雇の舞台裏にある真実を明らかにしようというのだ。

亀田総合病院元幹部が提訴、行政批判に言論抑圧はあったのか小松医師は、「地域医療の改革者」「民間病院の雄」と称賛されてきた亀田グループを象徴する名物医師だった Photo by Masami Usui

 論客としても著名な小松医師は、国や県の政策とは異なる独自の地域医療を推進し、補助金支給をめぐる問題などで行政批判の記事を執筆してきた。そんな小松医師に亀田上層部は約1年前、「(厚労省関係者から)行政の批判を今後も書かせるようなことがあると、亀田の責任と見なす。そうなれば補助金が配分されなくなるとほのめかされた。千葉県への批判をやめてもらえないだろうか」と頼んだ。

 小松医師はそれに従うどころか、厚労省職員による不当な圧力への調査と厳正な対処を厚労相に求める文書を提出することにした。同医師によると、省内の知り合いに相談目的で渡した文書原案をある厚生官僚が入手して同省出身の千葉県健康福祉部の課長と共有、同課長から亀田の経営者に渡った。直後、同医師は懲戒解雇された。