文京区には、2つの丘と3つの谷がある。東の端は根津・千駄木の谷。これに隣あって本郷台地。地下鉄が地上に顔を出す後楽園からは、指ヶ谷・千川谷がふた又に延びる。

 区の西側は、小石川・目白台地。南部の神田川に沿った一帯は平川谷。だから坂が多い。これらの坂の上に、下に、あるいは坂そのものに、60を超える商店街がある。時代が変わればニーズも変わる。これに合わせるようにして、文京区の商店街は新陳代謝を続けている。

小売シェア/所得シェア比率は最低レベル
消費の「区外流出」が止まらない!

 東京都全体に占める各区の小売販売額の割合を「小売シェア」、課税対象所得額の割合を「所得シェア」という。前者は販売力の、後者は購買力の強さを示す指標とされる。

 一方、小売シェアと所得シェアの比は、数値が大きければ区外からの消費流入が多いことを、数値が小さければ逆に区外への消費流出が多いことを示す。

文京区の商店街――消費流出に悩む老舗店に差し込んだ「街歩きブーム」という光明

 文京区はこの「小売シェア/所得シェア」の比が、杉並区、世田谷区に次いで低い。ただし、昼夜間人口比率は杉並区、世田谷区が共に0.8台であるのに対し、文京区は1.91。本来昼間流入人口が多いと、それに伴って消費も流入してくるから、販売力が大きくなるはずだ。そう考えると、文京区は消費の区外流出が23区で最も大きい区だとも言える。

 新宿、池袋、上野、銀座などへの交通アクセスに恵まれている文京区は、区内に大きな商業集積が生まれにくい。店舗面積1000㎡以上の大型店の数は、23区中最低である。