超高齢社会に突入して9年。年間死者数は増加の一途を辿るが、1件あたりの葬儀費用と会葬者数は下降線を描き続けている。そのなかにあって、葬儀後に日を改めて「お別れの会」を開催する取り組みが広がりをみせている。コンパクトに葬送を済ませる昨今のトレンドとは真逆のアプローチといえそうだが、どんなニーズが隠されているのだろうか。(取材・執筆/古田雄介)

葬式が終わったしばらく後に
もう一度「お別れ会」をする

 葬式といえば、通夜式をした翌日に葬儀・告別式をするのが一般的な流れだ。それから火葬場に向かい(地域によっては葬儀の前)、初七日法要などを済ませて精進落としで締める。しかし最近は、ここから数日~数ヵ月経った後に「お別れの会」や「お別れ会」を開くケースが増えてきている。

葬式簡素化で「お別れの会」急成長、気になるその中身少年野球の監督だった男性のために開催されたお別れ会。題して「父ちゃんのお別れ会」では、少年たちが”献球”で故人を偲んだ 写真提供:鎌倉新書「Story」

 たとえば、50歳の若さでガンによりこの世を去ったある男性は、少人数の身内だけで執り行う「家族葬」で送られた半年後、改めて斎場を借りて開かれたお別れ会で、監督として熱心に取り組んだ少年野球の仲間たちにユニホーム姿で偲ばれることになった。

 白いカーネーションでホームベースをかたどった祭壇を設置し、葬式のときの数倍になる185人の参列者に献花ならぬ“献球”をしてもらうというスタイルだった。

 また、高齢で安らかに亡くなったある女性の葬儀後、その子どもと孫、ひ孫たちは、一族のつながりを確かめるようにささやかなホームパーティを開いた。開催地は故人を含む一族全員で赴いた最後の旅行先である安曇野。家族写真に囲まれた庭園にキャンドルなどを置き、親族と友人15人で追憶のときを過ごしたという。

 お別れの会の定義は漠然としており、ホテルのフロアを貸し切って数百人を集める社葬に近いものもあれば、前述のように少人数が屋外で行うパーティもある。会場も規模も式次第も自由で、宗教的なしがらみもない。共通するのは葬式の後に行うということくらいだ。

 葬儀社がお別れ会も手がけるようになったのは2000年以降で、活発化したのは2010年代に入ってから。とくにここ数年は顕著に伸びている。2011年に「お別れナビ」を立ち上げた日比谷花壇は、お別れの会の実施件数が昨年比147%で伸びているという。