人工知能への課税で第4次産業革命を加速せよ!国が所有権の一部を持てば、AIが生み出す付加価値を、その持分割合に応じて得ることができる

AIが発達しても
国家の財政支出は減らない

本欄120回で、AIなど第4次産業革命への対応が順調に進んだ場合に生じる問題、つまり、大量の失業者やこれまで経験したことのない所得格差などへの対応を検討しておくことの必要性を述べた。

 その対策として、欧州の経済学者を中心に、国家が、無条件に(勤労や所得・資産の多寡にかかわらず)、最低限の生活を保障するための給付を行う制度であるベーシックインカム(最低保障制度、以下BI)が提唱されている。

 筆者は、この制度の導入には、「勤労モラルの問題」と「財源の問題」の2つを克服することが必要だ、という見解である。

 とりわけ後者の財源問題は大きい。

 AIが発達しても、人間に寿命がある以上、医療費はかかる。AIの活用・普及のためには、教育も根本から変わる必要があり、それにも費用がかかる。

 ちなみに高等教育はAI代替性が高いが、幼児教育はAIが発達しても残る職種であるとされており、今後の財政資金はそこに投入される必要がある。

 また、高速道路や港湾のメンテナンスなどの公共事業費も必要である。アジアの安全保障に係る費用は今日より飛躍的に増大しているかもしれない。

 つまりAIが発達しても、国家の財政支出がそれに応じて縮小していくというメカニズムにはならないのである。

 国家は依然として、様々な財政需要に応えるために財源を必要とするのに加えて、厄介なことに、AIの発達により、われわれの能力・知識に伴う所得格差や資産格差は、今とは比べものにならないくらい拡大しているだろう。