杉並区の商店街と言えば、まず思い浮かぶのが「高円寺阿波踊り」だろう。1957年(昭和32)年に、現在のパル商店街に青年部が誕生したことを記念して行なわれたのが、その始まりである。おはやしは、チンドン屋が奏でる佐渡おけさ。「阿波踊り」ならぬ、阿波踊り「のようなもの」だったとか。

 1回目の観客はわずか2000人。2回目でようやく5000人。何度も存続の危機を乗り越えながら、今や踊り手1万人、見物客100万人にまでなった。一商店街のイベントは、街が総出となる祭りへと成長した。

商店数は多いが規模が小さく、
販売力が弱い杉並区の商店街

 典型的な山の手住宅区である杉並区の商業の特徴を一言で表わすと、「数は多いが規模が小さい」ということになる。データでおさらいしておこう。

 区内の商店街数は140と、大田区、世田谷区に次いで3番目に多い。小売店舗数が5位、専門店数が4位、面積が8位であることと比べると、買い物の利便性は決して悪くない。

 次は規模のデータ。宅地に占める住宅用地の割合は、最高である。反して、商業施設用地(専用商業施設用地と住商併用施設用地の合計)の割合は最低だ。狭い面積の中に沢山の店があるから、1店当たりの平均売り場面積は20位、専門店に限ると21位とどうしても小さくなる。

杉並区の商店街――消費が大量流出する一方、人を虜にして離さない“山の手ブランド”の魔力

 規模が小さいと、販売力には限界が生じてくる。その結果、小売販売額は16位、専門店では15位と中位以下に落ち込む。小規模ゆえに競争力にも欠けるため、過去5年間の販売額の増加率は、全店舗合計が22位、専門店も21位に甘んじている。