トランプの政権人事、異例の登用がもたらす内紛の火種

政治経験がまったくない上に敵の多いトランプだけに、新政権の人事は重要になる。バランス良く配置しているように思えるが、同時にそれは内紛の火種でもある。

 トランプノミクス実現の担い手たちはどんな顔触れになるのだろうか。副大統領以外で就任が確定している2人の人物の対照的な経歴からは、共和党とのパイプと支持層へのアピールという思惑が透けて見える。

 大統領首席補佐官に決定しているラインス・プリーバスは、共和党の全国委員会の委員長だ。オバマ政権の大きな政府路線に反対する、増税なき小さな政府を旨とするティーパーティー派に属する。

 プリーバスは財政の支出に対しては厳しい立場を取る。かつて、地元に持ち上がった高速鉄道建設計画に、財源の点から猛反対し、頓挫させた経験を持つほどだ。

 政府による大規模な投資を掲げるトランプの政策とは本来、主義が異なる陣営にいるはずだが、トランプとしては、共和党とのつながりを重視して登用した。思惑通りすでに共和党内部からは歓迎の声が上がっている。

 何しろ、トランプが掲げる、貿易面での保護主義政策と安全保障面での同盟国軽視は共和党の本流とは正反対だ。プリーバスを接点に、共和党側の譲歩を引き出していくことを狙う。

 一方、もう一人の確定組が首席戦略官・上級顧問となるスティーブン・バノンだ。バノンは選挙対策本部では最高責任者だった。白人至上主義のような主張が目立ち、反ユダヤともいわれ、この人選には共和党内部やメディアから大きな批判が上がっている。それでも登用したのは、トランプを支持した白人層の意を酌んでいることをアピールするためと思われる。