中国のGDP(国内総生産)が日本を抜き、世界第2位となることが確実となった。中国政府の発表によれば、2010年の名目GDPは39.8兆元(5.9兆)ドルとなった。

 これに対して、日本はまだ10~12月期が発表されていないものの、10年のGDPは5.4兆ドル程度と推計されている。日本は1968年に、当時の西ドイツを抜いて米国に次ぐ世界第2位に躍り出て以来、43年ぶりにその座を明け渡すことになる。

 中国はGDPの全体額で、世界第2位の経済大国になっただけでなく、まだ成長率も高いので、この巨大市場を目指して世界各国の企業が押し寄せる。世界の政治・経済における発言力が増していくのも、また当然のことだ。かつて、高度成長時代の日本もそうであった。

 たが、中国の経済指標を全体の集計数でなく、国民1人あたりに直してみると、また違った顔が見えてくる。

1人あたりGDPは日本の10分の1程度
貧富の格差、官民相互不信も抱える

 まず1人あたりGDPである。2010年の両国の人口は、中国が約13.5億人、日本が約1.3億人だから、1人当たりGDPを概算してみると、中国が約4400ドル、日本が4万1000ドルになる。

 IMFの統計によれば、2009年は日本が約3万9700ドルで世界17位、中国が3700ドルで世界98位だった(アメリカは約4万6000ドルで8位)。中国は人口が日本のほぼ10倍で、GDPの絶対額では日本を追い越したものの、1人あたりに直すとまだ日本の10分の1から9分の1程度しかない。

 経済成長の目標が国民1人1人が豊かになることにあるとすれば、中国自身が認めるように、中国はまだ開発途上の段階にある。にもかかわらず、上海や北京の中心部では、高級外車を何台も乗り回す富裕層の姿が伝わってくる。

 1人当たりのGDPは日本の10分の1しかないのに、そうした富裕層が数多く出現しているということは、それだけ貧富の格差が大きいということである。しかも、「国富・国強」、「民窮・民弱」と表現されるように、高成長で潤っているのは政府と国有企業だという現実がある。最近では土地再開発のために、地方政府が農民の住居を強制的に撤去する事例が増え、官と民との相互不信が高まっているという。