性犯罪者が被害者に抱く「身勝手な妄想」の正体(上)

2016年は、性犯罪ニュースが多い1年だった。法務省「犯罪白書 平成27年版」によるとここ5年ほど強姦の認知/検挙件数は微増、微減をくり返しており、強制わいせつの認知/検挙件数は微増傾向にある。今年に入って飛躍的に増える理由も特に考えられないため、実際の件数はさほど大きな増減がないのだろう。が、「記憶に残る」ニュースが多かった。

来年には強姦罪の厳罰化などを含む刑法改正が見込まれていることもあり、あらためて2016年の性犯罪を識者の対談によって総括したい。東京・榎本クリニックに所属する精神保健福祉士、社会福祉士として、10年前から日本で初めてとなる“社会のなかでの性犯罪加害者更生プログラム”に取り組む斉藤章佳氏と、数々の裁判を傍聴し、最近では「新潮45 2016年11月号」にルポルタージュ「東大生集団わいせつ事件 『頭の悪い女子大生は性的対象』という人間の屑たち」を寄稿したライターの高橋ユキさん。ふたりの目には、今年の性犯罪事件はどう映ったのか?(構成/フリー編集&ライター 三浦ゆえ)

大学生による集団暴行続発
「頭が悪い女は性的対象」発言の裏側

高橋 なんといっても大学生による集団暴行事件が多かったですね。斉藤さんのクリニックで行われているプログラムは、こうした集団暴行の加害者も受講していますか?

斉藤 集団性暴力事件で逮捕された人はいませんが、逮捕歴がある性犯罪者のなかで過去に同様の経験を持つ人は少なからずいます。今回は有名大学の学生なので、ことさら騒がれていますが、私自身の学生時代にも似たようなことが頻繁に耳に入っていましたから、どこの大学でも以前からあったと推測できます。高橋さんは公判で、「彼女らは『自分たちより頭が悪い』と考えるようになり、性的対象としてしか見られなくなった」といった主旨の、東大生の発言を直接聞かれたのですね。