「多極化した世界」で起きた5つの大きな変化

1.IFRSが前提とする(直面している)世界経済

 IFRSは、今世紀に入って急激に進展した「多極化した世界」を前提としている。そうした意味でも、この世界観への理解抜きにはIFRSを正しく語ることはできない。

 19世紀から20世紀初頭、欧米2極だった世界は、第二次世界大戦後、復興を遂げた日本を加え、20世紀後半に日米欧3極へと変遷した。そうした時代を経て、中国やインドを筆頭に数多くの国が経済的に大きな影響力を持つようになった21世紀以後の時代を表すのが「多極化した世界」だ。

 しかし、多極化した世界は3極経済の延長線にあるものではない。様々な点で世界経済のルールが大きな変貌をとげ、全く新しい経済社会が生まれている。企業の経営者は、その事実を真摯に受け止めて、これまでの成功体験に安住することなく、あらたな世界経済のルールに応じた自社の強みを生かしたビジネスを推進していく必要がある。

 多極化した世界の特徴を確認しておこう。世界が多極化したことで、以下のような5つの視点で大きな変化が起こっている。すなわち、「新たな市場の創出」、「資源の争奪」、「人材の争奪」、「新たなイノベーション」、「新たな資本の流れである。

a)新たな市場の創出:

 発展が著しい新興国だが、1人あたりの所得水準は依然として先進諸国と比べると高くはない。しかし、その高い成長率と膨大な人口により世界経済の中で大きな位置づけになり始めているのは確かだ。

 このマーケットは先進国とは異なる数多くの特質をもち、先進国市場で受け入れられた製品やサービスが同じように受け入れられるわけではない。しかし、企業にとっては非常に大きな成長市場であり、新たに活躍できるチャンスが生まれたともいえる。