夫の小づかいは、将来に向けた投資であり、保険でもある。そして、期待リターンも高い。妻に対してそう言い切れるならどんなに好都合か、と思われる男性読者も少なくなかろう。しかし、説得力がない。特に、若い読者は、花輪陽子氏の新著『節約せずに年間200万円貯める方法』(大和書房)を購入して、家の適当な場所に置いておくといい。

 この本の趣旨は「小づかいをケチるより、やるべきことがあります」とあるとおり、小づかいは将来の収入の可能性に向けた投資であり、簡単に削減すべきではない。削減すべきは、住居費、生命保険料、自動車代、教育費など家計の大きな固定費だというものだ。著者の花輪氏は若手(30代前半)の女性FP(ファイナンシャルプランナー)だが、ご主人共々、リーマンショックのあおりでリストラされた経験を持つ。その後、彼女自身はFPの勉強に投資して独立したし、ご主人は日頃付き合いのあった知人のつてで再就職を決めたという。共に「お小づかい」をケチっていたら、次の収入につながるチャンスをつかめなかっただろうというところに、花輪氏のいわば「原体験」がある。

 花輪氏によると、小づかいの適正額は収入の1割だという。また、収入の25%を貯蓄することを勧めている。ついでに、住居費は収入の25%以下に抑えるほうがいいという。読者は、これらの数字についてどう思われるか。

 筆者は、そもそも支出内容を正確に把握していないところに大きな問題があるが、小づかい的な支出に対して収入の1割以上を使っていることは確実だ。書籍等の資料代にもそれなりに使っているが、正直なところ、飲食に使う金額のほうが多い。しかし、振り返ると、書いたり、話したり、という仕事は、発注側が「(すでに)知っている相手」に仕事を頼むことが多い。交際費的な支出には将来の仕事の受注につながっていると解釈できる面もある。消費のつもりで使っているおカネも、意外に投資になっているのかもしれない。