預貯金が史上最低の低金利だと言われるようになって、もう何年になるだろう。日本銀行の推計によれば、バブル崩壊後、超低金利によって家計が失った利子所得、〝普通の状態〟なら受け取れたはずの利子の総額は、2007年の時点で331兆円にものぼっていたとされる。

 ネット証券の創業を考え始め、個人のお金に関心を持つようになったマネックスの松本大さんはあることに気づくようになる。それは、もしかすると日本では、個人のお金は虐げられているのではないか、ということである。

「個人のお金に興味を持ち始めたとき、調べてみたことがあったんです。たとえば、アメリカの金融機関の預金金利で面白いのは、金融機関同士がマーケットで貸し借りをする金利と、個人の預金金利はそれほど大きくは変わらない、ということです。当然です。お金そのものの価値は同じなわけですから。

 ところが日本ではどうか。当時は、金融機関同士で貸し借りをする金利よりも、はるかに個人の預金金利が低かった。明らかに、個人のお金が低く見られていたということでしょう。だから結果的に、日本の預金金利はアメリカの預金金利の水準よりも、はるかに低いんです。これは他の国と比較してもかなりいびつです」

お金を預けることで
あなたは得をしているか?

 実はこうした〝個人のお金が虐げられている〟傾向は、今も続いているように思える。たとえば、普通の銀行の預金金利は1年満期の定期預金でも0.1パーセントにすらおよばない。10年満期でも1パーセントにも満たないのだ。

 では、その預金を使って大規模に買われている国債の金利はどうか。商品のタイプや時期によっても変わるが、概ね定期預金よりも金利は高い。1パーセント以上高いことも珍しくない。銀行は超低金利でお金を集め、1パーセント近く上乗せされた金利を持つ国債を買えば、1パーセント近い利益が生み出せる、ということだ。