60歳を目前に肺がんが見つかったLさん。ステージ(病期)2でリンパ節にも転移があり、治る確率は五分五分、禁煙10年目のことだった──。

 がん死トップをひた走る肺がん。早期発見が難しいうえに抗がん剤が効きにくいと「難治」を描いたような悪性腫瘍だ。診断された時点ですでに7割以上の患者がリンパ節や他の臓器に転移している進行がんで、意識して早期発見に努めない限り、最初から不利な闘いを強いられる。

 胸部X線撮影による肺がんの集団検診が国庫負担で始まったのは1987年から。その後、費用に見合う効果──つまり早期発見による死亡率の減少が認められない、として97年に公費負担が見直され、現在は各市町村に一任されている。しかし、自治体によって検診の精度や方法にばらつきがあるなど問題があり、再見直しを求める声も少なくない。

 さて、肺がん死を減らすだけの有効性を持つ検診方法は何なのか。一時期、はやったPET(ポジトロン断層法)はごく早期の肺がんを見逃す可能性があり、これだけに頼ることはお勧めできない。また、MRI(磁気共鳴画像法)は呼吸器が不得意なので、これも単独ではちょっと、という感じだ。