「インドネシア企業が経営する五つ星ホテルのトイレを見てください。それらは海外の五つ星ホテルのように便利で清潔です。インドネシア人には高品質のサービスを提供できる能力があります」。これはホテル関係者の発言ではなく、原子力発電を推進する政府関係者の数年前の発言だ(英「エコノミスト」誌電子版3月25日号)。

 原発反対派は、インドネシアには原発を安全に運営する十分な能力がないと懸念していた。それに対して彼は、上記の説明で説得を試みた。しかし、福島第1原発の事故が発生した今となっては、説得が難しくなっているだろう。ジャワ島には火山がある。彼らは日本の原発を「地震に強い安全性のお手本」として引用していたが、その前提が崩れてしまった。

 世界中で原発建設を見直す動きが高まっている。世界の発電量に対する原発の比率は14%といわれている。日本の30%に比べれば低い。国によっては脱原発が可能だろう。しかし、多くの国で火力発電への回帰が起きれば、二酸化炭素排出量が増大することに加え、化石燃料価格のさらなる高騰を誘発する。悩ましい問題だ。