携帯電話業界は、売場に行っても雑誌を見ても、話題はスマートフォン(スマホ)一色のようだ。全国量販店の実売ベースを集計したBCNランキングによると、今年2月は上位6位までスマホが独占。「日本国民総スマホ化」が着々と進んでいるようにも見える。

 しかし、よくよく内実を見るとそうでもないらしい。同じBCNランキングでは携帯電話販売台数に占めるスマホの割合も発表しているが、2月は44.3%であり、これまで5割を超えた月はない。つまり、まだ5割以上は日本独自の従来型携帯電話、いわゆるガラパゴスケータイ(ガラケー)が占めている。

 また、家電量販店だとスマホの売り上げが若干高めに出る傾向があり、携帯電話ショップなどを含めればもっと比率は高いと推測される。全体で見ると、実はスマホよりガラケーのほうが売れているのだ。

 では、ガラケーの中でも何が売れ、注目されているのだろうか。BCNランキング(3月7日~13日)を見ると、スマホの後塵を拝しているものの7位に食い込んでいるのが、シャープの「SH009」(au)。防水付きで7色のカラー展開が特徴だ。

 8位は京セラの簡単ケータイ「K005」(同)、9位はソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「URBANO MOND」(同)がランクインしている。使いやすさが重視されているいずれも年配向けの端末だ。こう見ると、スマホで出遅れ感があるauだが、ガラケーではしっかりとツボを押さえた端末を出していることがわかる。

 一方、NTTドコモやソフトバンクモバイルも新機種で攻勢をかける。キーワードは「デザイン」だ。NTTドコモは国産ヒノキをボディに使った「TOUCH WOOD SH-08C」(シャープ製)や、バカラとのコラボレーションモデル「SH-09C」(同)を発売。前者は1万5000台、後者は5000台の限定販売だ。ソフトバンクモバイルは、女性に人気のブランド「PAUL & JOE」とのコラボレーションモデル「004SH PJ」(同)を発売し、話題となっている。

 ガラケーの「今」について、携帯電話に詳しい武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部の木暮祐一准教授は、こう解説する。

 「従来のガラケーは何でもかんでも機能を詰め込むという発想で多機能化してきた。しかし、スマホに多機能化の座を奪われ、ガラケーも新たな個性を模索し始めた。たとえば、デザインに徹底的にこだわるのも1つの方向性。あるいは、どこから見てもデジタルカメラだが、実は話せるというユニークな端末「L-03C」(LGエレクトロニクス製)も出てきている」

 防水付きでカラフル展開する「SH009」も一例だろう。要は、多機能以外の個性でスマホとの差別化を迫られ、実行に移しつつあるのが今のガラケーの姿なのである。

 では、今後のガラケーはどうなるのか? 「ベースを考えると、スマホがコンピュータなのに対し、ガラケーは電話なので、その電話機能をより進化させる可能性はある。つまり音質がいいとか、話しやすい、聞きやすい、つながりやすいなど。そうなれば、ユーザーの中には2台を所有し、情報端末はスマホ、通話端末はガラケーと、使い分ける人も出てくるだろう」(木暮氏)。

 さらに、「L-03C」のように電化製品としての機能がメインで、通話・通信機能はサブといった端末も多くなるのでは、と予測する。たとえば、一見電子書籍リーダー、ポータブルテレビ、デジタルビデオカメラだが、実は通話・通信機能があるといったものだ。こうなるともはや携帯電話とは言えないかもしれないが、これが「ガラケーの進化の延長線上にある」と、木暮氏は見ている。

 スマホ一人勝ちのようで、ガラケーもしぶとく生きている。そして、今後もガラパゴス諸島のイグアナのように、環境に合わせて独自に進化してくようだ。

(大来 俊/5時から作家塾(R)