復興へむけた懸命な努力が続く

 2011年3月11日に東日本を襲ったマグニチュード9.0の巨大地震により、東北地方を中心に被害が広がっている。被災地の状況も徐々に明らかとなっており、4月4日に警察庁の発表では、死者1万2259人、行方不明者は1万5315人。17都県の約2100カ所に16万6000人が避難所での生活を余儀なくされている。

 東北地方に店舗を展開するHC企業も多くの被害を受けた。長周期振動により巨大化した大津波が発生し、いまだに安否確認のとれていない社員がいるHC企業もある。

 多くの企業では店舗復旧のため、本部社員が総出で駆け付け、ようやく落ち着きを取り戻しつつあるが、いまだに余震が続き、不安定な状況が続いている。部分的に営業を再開、または店頭での仮設営業など、生活者のライフラインとして必死に対応する企業がある一方で、当面営業再開が難しい店舗も明らかになってきた。

 4月1日現在、地震により店舗の営業に影響を受けている店舗をまとめた(表1)。大きな被害に直面したホーマック(北海道/石黒靖規社長)は7店舗が当面閉鎖、3店舗が休業する一方で、10店舗で部分営業を開始した。コメリ(新潟県/捧雄一郎社長)は岩手県1店舗、宮城県8店舗、福島県9店舗で休業が続いている。

大きな爪痕を残した「東日本大震災」<br />復興へ向けた懸命な努力が続く

 津波の被害も深刻だったが、今後懸念されるのは福島第一原子力発電所付近で営業していた店舗である。同エリアで店舗を構えていたHC企業の幹部は「避難指示に従っているが、先が見えない。解除されたとしても店舗や在庫商品は継続使用できない可能性が高い」とため息を漏らす。

 また、東京電力が導入した計画停電に対しては、原則営業を停止しているHCが多い。震災特需による一時的な売上アップにつながっているのは確かだが、短くとも今夏までは続くと予測される計画停電により、今後の業績が大きく左右される可能性が大きく、業績予想を立てるのも難しい状況だ。

 商品面では、乾電池や懐中電灯、ガスボンベ、携行缶、発電機などが品薄となっている。資材関連ではブルーシートや合板などが入荷未定となっているHCも多い。「被災地に優先的に資材を供給する国の方針に従わざるを得ないが、それが本当に理にかなっているのか。現地に商品供給拠点も持つHCをもっと有効活用して、迅速に対処すべきだ」と東北エリアに店舗を構えるHC企業の社長は疑問を呈す。

 今回の地震によって、HCが被災者に何を提供できるのかという課題を突き付けられたことは事実だ。地震直後には避難場所として被災者の安全確保に貢献した店舗もあり、ライフラインとしての役割も改めて問われている。まずは店舗の復旧に向けた努力を継続し、生活者に安定的な商品供給を行うというチェーンストアに課せられた命題を果たすことが、生活者から何よりも期待されている。

 今後のHCの役割を問う意味でも、今回の震災は貴重な教訓として心に刻み、ひとつひとつ手探りで解決していくことが、HCに携わる職業人として求められている。


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大きな爪痕を残した「東日本大震災」<br />復興へ向けた懸命な努力が続く

2007年6月施行の改正建築基準法や、2008年秋のリーマンショックの影響による新設住宅着工件数の大幅減少などにより、建築業界を取り巻く状況は変化しています。職人が建築資材を購入していた建材や金物の専門店も年々減少する一方で、ホームセンター(HC)が展開している職人向けのプロショップがじわりと数字を伸ばしています。
好調の背景には、生活者の住宅への関心が新築だけではなく、リフォームにも向いてきたことが挙げられます。「いま住んでいる住宅を少しずつ改修して使い続けよう」と考える人が増えています。まずはトイレやキッチンなど身近なところからリフォームをすることになりますが、工事の担い手となるのが、中小規模の工務店です。HCは専門店と違い、住宅設備機器から建材や木材、小物、工具などがワンストップで購入することができ、少量でも安く購入できるので、職人にとっては非常に便利な存在になっています。職人向けの資材販売チャネルとして、HCの存在感をより高めるためにはどうしたらよいか、第1特集ではHCのプロ市場への取り組みをまとめました。
第2特集では今年4月に社名を刷新してグループシナジーを追求するLIXIL(リクシル)ビバ、第3特集ではジョイフル本田にとって4年2カ月ぶりの出店となる超大型店「ジョイフル本田千代田店」をリポートします。充実した誌面でお届けする「ダイヤモンド ホームセンター」5月号、ぜひご覧ください。
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