10月31日、日本銀行が政策金利であるオーバーナイト物金利の誘導目標を0.5%から0.3%に0.2%引き下げた。

 10月24~28日に91円を割ったドル円レート、26年ぶり安値に沈んだ日経平均株価は目下、利下げを受けて共に値戻しの動きを加速させている。利下げが功を奏したともいえる。

 だが、今回のプロセスは、今後に禍根を残しかねない問題を孕む。

 まず決定のドタバタぶりからうかがえる内部コミュニケーションの問題だ。0.2%利下げ提案に対し、政策委員会の投票は賛成4、反対4と同数(反対のうち3人は0.25%利下げ)。議長(総裁)決定を仰ぐ異例の事態となった。

 議論がまとまらず時間切れとなったと目されるが、0.05%の違いをめぐって紛糾したことに、市場関係者は「内部がぎくしゃくしているのでは」と怪しむ。

 次なる懸念は、対外コミュニケーションだ。市場関係者は「ひと言でいえば下手」と切って捨てる。

 これまで「0.5%の現状は十分に緩和的」と繰り返し、現状維持をにおわせてきた審議委員の一部に利下げが浮上し始めたのは、件の10月24~28日のこと。27日にはG7が円高懸念の緊急共同声明を発表している。

 審議委員たちの大勢がにわかに利下げに傾いたのは、関係者によると29日前後の模様。「日本経済新聞」朝刊が日銀利下げ検討と報じ、鉱工業生産指数の大幅悪化が明らかとなり、30日に政府の追加経済対策発表を控えていた。

 それまでの間、白川方明総裁ほか執行部が「利下げもありうるとメッセージを発信すべきだった」と多くの市場関係者が指摘する。

 さらには、今回のプロセスで「日銀は(政官や報道に)追い込まれると弱い、という印象を与えた」(市場関係者)のは痛手だ。流動性対策など課題山積の日銀を取り巻く環境は波乱含みである。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣 )