学生向けに、おカネについて考えるための話を作ってみた。たとえば、会社に入って次の3人の先輩がそれぞれおカネについてアドバイスをしてくれたとすれば、どの先輩を師とするのがいいか?

 先輩A「毎月一定額のおカネを給料から先に差し引いて貯蓄し、残ったおカネで生活すべきだ。ある程度おカネが貯まったら、しかるべき方法で運用するといい」。

 先輩B「借金さえしない範囲なら、若い頃は小ガネを貯めるより、自分への投資だと思っていろいろな経験に使うほうがいい」。

 先輩C「おカネは早く大きな額で運用するほうが有利だ。近年はレバレッジ(実質的借り入れ)を使った運用手段も豊富だ。私の友人に詳しい証券マンがいるから、今度、一緒に話を聞きに行こう」。

 一般的に正しいのは、文句なく先輩Aのアドバイスだろう。定期的な収入から先に貯蓄分を確保して、残りで暮らす生活に慣れることには数多くのメリットがある。そもそも、凡人はこうしなければおカネが貯まらない(筆者の若い頃がそうだった)。ある程度の余裕ができると、生命保険などのムダなコストが節約できる。おカネの運用をするためには、運用するための金融資産が必要だ。

 また、もともと切り詰めた生活に慣れておくと、収入が減るような経済的リスクにも適応しやすい。

 実際、就職して10年目くらいの段階で同期生と財産を比べてみると、就職先の年収の多寡よりも、支出の習慣の差が圧倒的だった。学生君が30歳の時点で三つのアドバイスの価値を検証するなら、たぶん先輩Aのものが圧勝する。