経産省はどう動くか?

 前回に引き続き、トランプ大統領が就任した米国に対し、日本企業がどのように対応していくべきかについてお話します。

 アメリカ人は「フェアネス(公平性)」を大切にします。日米の貿易交渉でも日本にフェアであることを求めてくるでしょう。

トランプ政権に左右されない企業経営のあり方とは小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 トランプ大統領は「自動車貿易」はフェアではないと主張しています。日本から米国への輸出台数が百万台単位であるのに対し、米国から日本への輸出台数は数千台規模と、文字通り桁違いに違うからです。

 しかし日本からのアメリカへ輸出する自動車には2.5%の関税が課せられるのに対し、アメリカから日本への輸入は関税はゼロです。世耕経産相は「関税以外の部分でも差別的な取り扱いはしていない」と反論していますが、果たしてそれが通じる相手でしょうか。

 アメリカ商務省が発表した2016年の貿易統計では、モノの貿易赤字額は全体で7343億ドルでした。そのうち対日赤字は689億ドル(約7兆7000億円)で、そのうち自動車関連の対日赤字が526億ドルを占めました。

 前回もお話したとおり、トランプ大統領は政治家として「大人」ではありませんが、生粋のビジネスマンです。ビジネスマンは「どれだけ努力をした」のかではなく、「どれだけ結果を出せたのか」を重視します。

 例え日本の輸入車の関税がゼロであっても、アメリカ車の輸入台数が少なくて自動車関連の貿易が大幅赤字なら「結果のフェアネス」を求めてくると考えます。彼の考え方の根底にあるのは、米国の雇用、それもトランプ大統領誕生を強く支持した鉄鋼や自動車などの労働者たちの雇用をいかに守り、増やすかだからです。

 2014年、当時のオバマ大統領が来日して首都高を走った時、アメリカ車が走っていないことにがくぜんとしたそうです。「すきやばし次郎」での夕食時、アメ車が走っていないことを大統領が指摘すると、安倍晋三首相は「ドイツ車はたくさん走っていたでしょう?」と答えました。

 日本は輸入車に対してフェアな市場であることを穏やかに伝えた上手な切り返しだと思いますが、「結果のフェアネス」を求める尺度では、アメリカ車が たくさん走っていない市場はフェアな市場ではないことになります。