被災地の現状を見据えて“便利さ”を提供<br />移動販売車を続々投入するコンビニ各社の戦略ローソンが被災地に投入した移動販売車。派遣地域の保健所から許可を受けた後に営業を開始する──ローソン公式サイトより。

 東日本大震災によって、私たちは生活様式の変更を余儀なくされた。電気・水道・ガス──生活インフラとの付き合い方を、被災地のみならず全国規模で見直し、生活における“便利さ”とは何かを、いま一度考える必要がありそうだ。

 その“便利”の象徴とも言うべきコンビニエンスストア・チェーンが、被災地復興のために動いている。

 セブン-イレブン・ジャパンは、同社初の試みとなる移動販売車を4月中旬から被災地に投入した。弁当、パン、おにぎりなどのデイリー商品に合わせ、スナックやカップ麺などの加工食品や日用雑貨など100種類を、セブン・イレブンの店舗や店舗跡で販売。買い物客は車内で商品を選び、携帯式の簡易レジで精算、代金を支払うシステムになっている。

 またローソンは、震災発生からちょうど1ヵ月となる4月11日から、移動販売車「モバイルローソン号」を岩手県に出動させている。飲料や弁当、サンドウィッチなど約80~100品目を揃え、同県での需要を確認しながら増車や他地域への拡大を検討中だ。

 被災地では、物品を購入できる場所が限られ、生活用品や食料品の確保が困難である。いまだに営業を再開できていないコンビニも多い。

 そんななか、商品点数が少なく、移動販売という形態とは言え、日常生活の象徴であるコンビニの営業再開が被災地の方々に与える安心感は、小さくないだろう。

 今回ローソンが「モバイルローソン号」に使用している車両は、ローソン近畿支社が保有している移動販売専用車であり、もともとは敷地内の移動に時間がかかる工業地帯で営業販売効率を上げるために使われていた。この点で、配送用トラックに販売機器を設置したセブン-イレブンとは異なる仕様と言える。

 店舗いらずのこの形態、今後のコンビニ戦略にも影響を及ぼすのではないだろうか。コンビニが人々に与えるのは“便利な生活”だけでなく、そこで営業しているという事実からくる“日常の意識”なのだから。

 一日も早い日常回帰にかける、コンビニ各社の企業努力に注目したい。

(筒井健二)