「『インフレ対策のために不動産を買っておけ』と言うのはでたらめ、今不動産を持っている人はすぐに売り払ってしまえ」

 中国の著名エコノミスト、謝国忠氏の発言が波紋を呼んでいる。同氏は3月19日、中国建設銀行が主催する広東省での「通貨政策と経済動向サミット」の壇上でこうぶちまけた。「今年は不動産のターニングポイント、中国の大都市の不動産価格はすでに臨界点を越えているため、早晩中国の不動産価格は下落に向かうときが到来する」――。

過熱する大都市部の住宅価格
上海では実質「年収の30倍」

 背景には中国の大都市における住宅価格の常軌を逸した値上がりがある。北京や上海など沿海部の不動産価格は天井高、実需層の手が届かないものとなってしまった。いわゆる「年収の5倍」が住宅価格の標準だとすれば、上海の内環状線の物件は実に「年収の30倍」以上にもなってしまった。

 しかも、現在は市内のどこもかしこも「(平米)単価3万元」(約37万5000円、1元=約12.5円)の“一律価格”。広さ、立地、築年数など一切問わずの十把一絡げで売られている状態なのだ。これを異常といわず、何と言おうか。

 90年代に中国政府が払い下げた、老朽化し物件価値がほとんどないと言えるアパートですら、現在は平米単価2万元でも買えない。

 中国では俗に「自分の月収」=「購入できる不動産の平米単価」だと言われているが、日系企業に勤務する管理職(よくて年収2万元)ですら、今の上海でマンションを購入することは到底不可能になってしまった。