短期の危機管理と中長期の危機管理
両者は代替関係にはない

 東日本大震災を受けて景気が下押し圧力に晒される中、震災のインパクトの焦点は「短期」に当てられやすい。

 政策もおのずと短期に関心が向かいがちだ。しかし、短期の危機管理と中長期の危機管理は代替関係にはない。短期の危機管理に傾注するあまり、中長期の政策路線が不可逆的に歪められることはあってはならない。

 中長期の政策としては、エネルギー政策(原子力の扱い、再生可能エネルギーの浸透・育成)、TPP(輸出主導であるにもかかわらず内需依存という歪んだ日本経済の構造を変えられるか)、税制改革(人口の年齢構造の変化に対応した税体系を再構築できるか)、人口問題などが挙げられる。

 これらの政策運営が奏功しなかったとき、日本経済は一層強い「空洞化」圧力に直面しよう。「空洞化」とは、マクロレベルでのサプライチェーンの喪失に他ならない。「空洞化」が日本経済にもたらす影響は、足元で議論されている個別産業のサプライチェーン寸断の影響をはるかに凌ぐはずだ。

 今回は、これら中長期の政策課題のうちエネルギー政策に焦点を当て、同政策の今後を展望する上での論点をいくつか検討してみたい。

 具体的には、(1)エネルギー源の可採埋蔵量と地理的分布、(2)エネルギー源の地理的依存度、(3)発電コスト、(4)新エネルギーの開発、(5)温暖化ガスの排出量、(6)危機管理だ。もちろんこれらが考慮すべき全ての論点というわけではない。しかし、基本的な視座を提供するものとは言えよう。

天然ガス、石炭、原子力、石油、水力――。
きれいに分散された日本の電源構成

 今後の日本は、これまで以上に安全性や管理可能性を重視したエネルギー選択を迫られる。その際、主要なエネルギー源の特性を把握しておく必要がある。主なポイントは図表1(ただし、本図表では太陽光、風力などの再生可能エネルギーは含めていない)のようにまとめられよう。

6つの視点で語るポスト3.11のエネルギー政策<br />――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト