アマゾンが今、各戦線で孤高の戦いを繰り広げている。

 最も過酷なのは、10月半ばに勃発した書籍の“激安セール”戦争。

 口火を切ったのは大手ディスカウント小売りチェーンのウォルマートで、近く発売される予定の新刊本の予約販売を10ドル以下の破格値で始めた。これにアマゾンが同様の値引きで対抗。さらに、その後、別の大手小売りチェーンのターゲットが参戦し、出版社も真っ青の、9ドルを切る未曽有の値引き合戦へと発展したのだ。

 しかも、値引き対象となっている書籍は、スティーブン・キング、ジョン・グリシャム、ディーン・クーンツといった超人気作家の新作ばかり。先の大統領選で、共和党の副大統領候補になったサラ・ペイリンの回顧録も含まれている。いずれも、通常価格が25ドルから35ドルのハードカバーであり、発売前から7割引きという信じられない値段設定だ。この激安セール戦争は現在も続いている。

 クリスマスシーズンを前にしたウォルマートの狙いは、安い本に釣られてやってきた客が、他の商品も買ってくれることだった。実際、米国の出版社の卸売り価格は50%を切ることはないと言われており、9ドルを切る値段は3社ともにかなり手痛い出血サービスだろう。

 とはいえ、今や本だけでなく、家庭用品や電気製品など多種多様な商品販売を手がけるアマゾンにとって、ウォルマートは宿敵。リアルの書店とオンライン・ショップの両方で攻勢を仕掛けてくるライバルに、アマゾンは負けるわけにはいかない。かくして、まるでコメディーのような価格戦争が起こっているわけである。

 アマゾンは、電子書籍の販売でも厳しい競争にさらされている。アマゾンが開発して米国市場で大きな成功を収めている電子書籍リーダー「キンドル」に、強敵「ヌック」が現れたからだ。