外資系の敏腕証券マンから不動産業へ<br />不動産物件のデータ管理ソフトで躍進<br />いい生活社長 中村清高いい生活社長 中村清高
マンション探しをするときに、サイトの世話になる人は多いだろう。沿線や間取り、価格などを入力すれば物件が検索できる。こうした大手検索サイトにデータベースのシステムを提供しているのが「いい生活」である。
Photo by Toshiaki Usami

「起業した2000年には、クラウドという言葉もなかった」と社長の中村清高は振り返る。

 中村は不動産業界出身でもなければ、ITのエンジニアでもない。証券マンだった。

 企業の公開引き受け(資金調達)畑ひと筋できた中村が、業界でその名をとどろかせたのが1998年のNTTドコモの株式公開。これまで、日本の証券会社が独占してきた大型案件の主幹事の座に、米ゴールドマン・サックス証券(GS)が割って入った。チームの一員として加わった中村は緻密な分析と情報収集力、そして交渉力を武器に、キーパーソンの1人となる。

「仕事はやりがいもあり楽しかったが、20年働いてきたので、新しいことにチャレンジしたくなった」。目をつけたのが不動産業界だった。

 不動産は資産であり、業者に対して規制がある点など株取引と類似している。だが、全国に13万軒ある不動産業者のなかには、手書きの情報をファックスで他の業者に送ったり、電話で確認するなど“前近代的”な取引が少なくなかった。

 さらにそれぞれの会社は物件情報を持つものの、チラシはチラシ用に、顧客管理は顧客管理用にと、ポータルサイトへの出稿はそれを打ち込む人が必要で、一元管理できていなかった。

「ITを駆使すれば、実需取引だけでなく、利回りを把握することによって資産を運用するための投資も増える。これからの成長市場だ」と確信した。

 証券の世界では、ブルームバーグのように、業界関係者がこぞって使うマーケット情報の端末がある。「物件情報のデータベースを核に、チラシづくりや顧客・物件の管理、営業マンの仕事の進捗状況などを総合的に管理するソフトを提供する。業界標準を目指そう」と思いを強くする。