夏が来る。国内で最も電力を使うシーズンだ。東日本大震災や福島第1原発事故の影響で、東京電力管内などの電力需給が逼迫することは避けられそうもない。

 東電は休止中の火力発電所の再稼働などで、約5500万キロワットの供給体制構築を急ぐ。だが、昨年のピークだった7月23日には、約6000万キロワットの電力需要が生じた。

 さらに今年5月に入り、菅直人首相が突然、中部電力に浜岡原発(静岡県)の運転停止を要請。これを受け入れ、中部電力は5月14日までに運転可能な3基すべてを停止させた。

 関西電力管内の福井県でも、西川一誠知事が定期検査のため停止中の高浜原発などの再起動に慎重姿勢を示している。東電が他の電力会社から電気を融通してもらうことも、困難になるだろう。

 電力不足への対策として、政府は東電、東北電力の管内で大口需要家のピーク時の電力使用量を15%削減するよう求めている。当然ながら、産業界からは悲鳴が上がっている。

「大きな工場はそもそもエアコンが効きにくい。たとえば、工場内の温度を26度に設定しても、作動する機械のそばでは30度を超えることが、ざらにある。エアコンの使用が制限されれば大変なことになる。高温で作業者が脱水症状を起こしかねない」(大手電子部品メーカー)。

電気代は1着につき月30円程度
「空調服」は電力不足対策の切り札に

 こうした夏場の電力不足に向けた切り札として、にわかに注目されているのが「空調服」だ。空調服は、服に取り付けられた小型ファンで外気を服の中に取り入れることで体を冷やす。