「やめたいヤツはやめればいい」――。部下の退社を、上司_「個人」の問題として、軽く考えてはいけません。社員一人を失うことは、会社側からすれば、その社員を育成するために今まで投資したコストを、まるまる失うのと同じことだからです。

 若手社員を雇った場合、ざっと考えても次のようなコストがかかっています。募集に使った「求人広告費」、仕事への心構えや基礎スキルを教える「研修費」、そして、稼げるようになるまでの「給与」です。

 求人広告を全国紙朝刊に1回掲載すると、15文字×5行程度(エリア限定)の小さなもので2万円前後かかります。

 日曜日の求人専用スペースに掲載した場合、全国エリア2段6分の1(タテ約70ミリ×ヨコ約65ミリ)サイズで、100万~150万円前後。もし、後者のスペースを使って5人採用した場合は、採用1人あたりにつき、20万~30万円前後かかった計算となります。

 さらに研修費が加わります。新卒社員に限ったものではありませんが、社員1人あたり年間の研修費として、某大手ビール会社で約12万円、インテリア関連商品を扱う某小売店で約25万円というデータがあります。

 また、月々の給与の平均は、大卒男子の初年度で20万8669円(日本経団連「定期賃金調査結果」2005年6月度)。給与は労働に対する対価ではありますが、社員が会社に利益をもたらすのは、一般に入社3年目くらいからでしょう。その間の給与は、将来の活躍を見込んでの、会社側の投資に過ぎません。

 これらを前提として、新卒社員が1年で辞めてしまった場合の損失額を、ざっと計算してみると、

 求人広告費20万円+研修費20万円+1年間の給与総額20万円×12カ月=約280万円