菅内閣に対する不信任案を巡る三文芝居は、結局、大義も何もない菅降ろしが目的だったことが明らかになった。国家的な危機に際して、政争にうつつを抜かす国会は本当に必要なのか。民主主義にとって由々しきことだが、そんな疑問すら起こっても不思議ではない。

 開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだ。しかも、権力の座を巡るごたごたが、「選良」の集まる国権の最高機関・国会で行われているのだから、被災者にはやるせなく、世界に向かっては痛く恥ずかしい。最も、当のご本人たちには「恥」という日本的美徳は、とっく昔にお忘れのようだ。

 去る2日に、菅直人首相が退陣の意向(と回りは受け止める)を表明してから、自民党、公明党、たちあがれ日本が共同提出した内閣不信任案を巡る情勢は一変した。与党民主党で、不信任案に賛成する構えを見せていた小沢一郎元代表の支持グループが自主投票を決め、不信任案は民主党の反対多数で否決された。三文芝居もこれで一応幕引きかと思いきや、翌日から菅首相が退任時期を巡って言を左右するのを受けて、首相に引導を渡したつもりの鳩山由紀夫前首相が、菅総理を「ペテン師」呼ばわりする始末である。

 中国のある高名なジャーナリストが言う。「いまは国会が一致団結して、国難に当たることが最優先ではないでしょうか。ところが、国会で行われていることは、菅さんが好き嫌いというレベルの争いのように見えます」。こう言われても、反論できない。結局、一連の騒動は、震災と原発をネタに菅首相を引きずり下ろすことが目的の権力闘争だと、判断せざるを得ない。

旧トロイカ三人衆に
リーダーの資格なし

 政治家に求められる最低限の資質を、結果責任をとる覚悟、自らを客観的に分析する冷静な目、潔い出処進退であるとしよう。

 まず菅総理である。

 実際、阪神淡路大震災と東日本大震災の復旧スピードを比べると、その遅れは覆い隠しようもない。阪神淡路と比べて今回は被災の範囲が広く単純に比較はできないとしても、電気がほぼ復旧したのは、阪神淡路が震災から6日後の1月23日、これに対して東日本は20日後の3月31日で、約17万戸が停電したままだった(東北電力管内)。象徴的に語られる仮設住宅は震災後43日目で、阪神が7013戸整備されていたのに対して、今回は575戸にとどまる。