東北の被災地を訪れてみると、現地でしか分からないさまざまなニーズが見えてくる。マス・メディアがあまり伝えないことでも、被災地の人たちにとっては重大な課題もある。

行政がやるべき仕事にも民間のサポートを。<br />メディアが伝えない、被災地の「支援ニーズ」大船渡市の仮設住宅。消火器が全く設置されていないため、万が一、一軒から出火した場合でも、一帯が全焼してしまう可能性もある。

 先日、大船渡市を訪れたときに聞いた話では、仮設住宅に消火器が全く設置されていないという。写真を見てもらえば分かるが、仮設住宅は概ね狭い場所に密集して建設されているので、消火器がなければどこかの住宅で火事を出せば、その場所の仮設住宅の全てが燃えてしまう危険性がある。

 仮設住宅の防災については、総務省消防庁よりハウスメーカーに執務資料が配付されており、「一棟につき1本」の消火器設置が謳われている。しかし、仮設住宅の住人が気づかない場所に設置されていたり、そもそも消火器が設置されていることを知らなかったりする。周知されていないのだ。また、住人のニーズは「一棟に1本」ではなく、「一戸に1本」である。そうでなければ、やはり不安になるだろうし、大きな火災になる危険性は否定できないだろう。

 このような話はニュースで取り上げにくい「小さな話」だが、住んでいる被災者の人たちにとっては「重大な話」だ。

刻々と変わる現地のニーズ。
被災地のリアルな声を

 仮設住宅は被災者の生活復興のための重要なインフラだが、仮設なだけに不具合も多い。先日の台風の時には、かなりの件数で雨漏りが発生したり、その他にも天井がゆがんでいたり、床がでこぼこしていたり、エアコンの配線が間違っていて作動しないなどの問題が起きている。結露もひどく、床や布団などがビショビショになっている家も多いという。秋の台風シーズンや寒い冬を迎えたときにどうなるのか今から心配になるが、そういった中でも、命にもかかわりかねない消火器の問題解決は急務だろう。

 大船渡市は行政の対応も素早く、5月上旬の時点ですでに義援金の配布も行われていた。仮設住宅の建設も進んでいて、合計で1790戸が建設予定。大船渡町だけで約500戸が建設されるという。それでもいろいろと問題が起きてくるのは行政の怠慢というより、行政の力だけでは足りないということだろう。行政がやるべき仕事にも民間のサポートが必要なのだ。

 というわけで、筆者は仮設住宅の消火器サポートもやりたいと考えている。簡単にいえば、寄付を集めて消火器を購入し、仮設住宅に提供するということ。読者の皆さんにも、被災者の生活の安全のためにぜひご協力をお願いしたい。詳しくは僕が立ち上げた東北復興支援プロジェクト「Tohoku Rising(東北ライジング)」のウェブサイトで近日中に発表するのでご覧いただきたい。

>> Tohoku Rising ウェブサイト http://www.tohokurising.org/

 この他にも、被災地からはさまざまな話が聞こえてくる。ハエが大量発生しているとか、ガレキに埋もれた食料を求めて熊が出没するようになったとか。これらの話は伝聞なので真偽は定かではないが、ありそうな話でもある。とくにこれからの季節、大量の殺虫剤やハエ取り紙の支援が必要になるかもしれない。